2013年
10月号

地域の信頼を集める病院

カテゴリ:医療関係, 西宮

兵庫県立西宮病院 院長
河田 純男さん

立西宮病院は、地域医療の拠点病院として大きな役割を果たす一方、腎移植や低侵襲治療など先端医療でも多くの実績をもつ。現在の状況や今後について、河田院長にお話しいただいた。

―西宮病院は県立としては規模が大きなほうですか。また、県立病院は阪神間に3つありますが連携を取っているのですか。
河田 県立の総合病院には尼崎、塚口、西宮、淡路、加古川、柏原がありますが、400床の西宮病院は比較的大きな病院です。平成27年度中に尼崎と塚口は統合され新病院になることが決定していますので、阪神間には県立2病院になる予定です。
診療ではそれぞれの得意分野を生かしながら連携するのはもちろんですが、新病院には救命救急センターも開設されますので連携分担をすることになると思います。また、薬剤や診療材料を共同で購入することによってコストダウンを図れるよう努めていますが、今後話し合いながらさらにその動きを進めていきたいと思っています。
―地域の救急医療でも大きな役割を担っているのですね。
河田 平成23年度4月から救命救急センターに指定され、24年度には約3千台の救急車を受け入れました。主に西宮市内ですが、芦屋市、伊丹市、尼崎市、宝塚市など近隣からの受け入れもあります。今年度4月からは災害拠点病院に指定され、更にドクターカーをもっている西宮市以外の遠隔地救急現場にもドクターが出かけていくラピッド・レスポンス・カーの運用を秋から開始します。
―腎移植にも早くから取り組んでいますね。
河田 昭和48年、自治体病院としては全国初の腎移植に成功しました。既に500例を超え、兵庫県内で1位、全国でも8位の移植症例をもっています。歴代の腎移植の専門医が当院から育っており、日本移植学会理事長の高原史郎先生も当院で腎移植に携わっておられました。腎移植は組織適合抗原が一致しなければ拒絶反応を起こします。当院では腎移植センターを置き2人のスタッフが専従で西日本の腎移植のマッチングを受け持っています。マッチングしにくい夫婦間での移植や血液型が一致しないケースなど、困難な例も克服し、移植実績を誇っています。
―先端医療については。
河田 大腸がん、胃がん、婦人科系がんの腹腔鏡手術で多くの実績があります。また、早期の消化器系がんでの内視鏡手術の中でも、大腸がんの内視鏡手術は保険適用以前から阪神間で当院だけが実施していました。
―がんは低侵襲治療が主流の時代ですね。
河田 かなりの進行がんは外科手術が必要ですが、早期であれば内視鏡手術と腹腔鏡手術、更にこれからはロボット手術も導入される時代です。県立でも、がんセンターを始めとして順次ロボット手術が取り入れられています。近い将来、当院にも導入されると思います。
―医師も新しい技術についていかなくてはいけませんね。
河田 ロボットが普及すれば遠隔から操作でき、なおかつ手振れがなく、かなりのズームが可能で細かい手術も安全に行えます。手術の考え方が全く変わり、全く違ったトレーニングが必要になるでしょうね。

地域の医療機関との連携

―3年後には西宮市立中央病院が近くに移転してくる予定ですが、普段から連携しているのですか。
河田 以前から当院と市立中央、市立芦屋を加えた3病院で機能的連携を図っています。例えば芦屋病院とは、婦人科からの妊婦さんの受け入れと分娩、逆に終末期のがん患者さんを緩和病棟にお願いするなど。市立中央病院には呼吸器系疾患の患者さんをお願いしていますし、逆に当院では婦人科と周産期医療を担当しています。市立中央病院の移転に向けては新たな連携を検討していく予定です。
―地域の医療機関との連携は。
河田 地域の診療所との連携の拠点として地域医療連携センターを当院に設け副院長がセンター長を務めています。私も平成23年4月の赴任後約2年間で約560軒の開業医さんを回らせていただきました。特殊な検査や入院が必要な患者さんを当院で受け入れ、逆に紹介状を持たずに来られた患者さんの診断がある程度付けば、連携をとっている最寄りの診療所を紹介します。WEBで内視鏡等の予約を取るシステムを開発しましたので、開業医さんはネットで当院に予約を入れていただけるようになりました。
―一般市民に対しては。
河田 JR西宮駅前フレンテホールで県民公開講座を1年に2、3回開催しています。当院の医師が交代で担当して、がんや生活習慣病などテーマを決めてお話しています。また、地域糖尿病センターを開設し、治療の目処が立ってきた患者さんは開業医さんにお任せして、入院が必要になれば当院で受け入れるという体制を取っています。
更に、糖尿病に関する前向きな研究「西宮スタディー」を進めています。地域の糖尿病患者さんに承諾を得て登録していただき、フォローしながら治療の経過や効果、弊害について調査、研究しています。中でも糖尿病とがんの関連については当院に事務局を置き、西宮市医師会と密接に協力しながら研究しています。世界でもあまり例を見ない研究で、いずれ西宮から世界に向けてその成果を発信できる時がくると考えています。
―先生が消化器内科でも肝臓を専門にされたのはなぜですか。
河田 日本は肝硬変、肝がんが非常に多い地域で、肝臓がんは感染症に起因する発展途上国型のがんです。今でこそB型、C型肝炎の治療法に目処がつき患者さんの数は減ってきていますが、私が医者になった当時はB型ウィルスが見つかったばかりの頃でしたので、この分野を研究していこうと思いました。
また、今はがん治療に使われている腹腔鏡ですが、実は元々、肝臓の検査用に使われていたものです。当時としては非常に興味深いものだったというのも理由の一つです。
―県立西宮病院として今後更に強化していこうという部門はありますか。
河田 当院は消化器系が充実した病院です。そこで、更にレベルアップを図ろうと来年1月1日から、消化器内科と消化器外科が一緒になって診療する消化器病センターを立ち上げます。外来、内視鏡検査、手術、入院全てを一体化しようというものです。地域の診療所から紹介されて来る患者さんの初診、検査、診断までをスピーディーに進めることができます。
―市民、県民により良い医療が万遍なく行き届くよう、これからもよろしくお願いします。

地域の救急医療でも大きな役割を担い、2013年度からは災害拠点病院に指定された


地域の医療機関との連帯では、芦屋病院から婦人科の妊婦を受け入れる


昭和11(1936)年に「兵庫県立西宮懐仁病院」として開設され、救急救命センター、腎移植センターを併設した総合的な診療機能をもつ。患者さんの立場に立った医師の育成のため、他の県立病院と連携した初期臨床研修、専攻医教育に取り組む


腎移植に早くから取り組み、兵庫県で1位、全国でも8位の移植症例をもつ腎疾患総合医療センター


「術前センター」を設置し、手術準備に関する説明など、手術前に行う業務を一括して管理する


河田院長は、予防医学をテーマにした解説書『予防医学から見た肥満、糖尿病、がん』のほか、C型肝炎の患者を救うため奮闘する医師たちを描いた小説『Cの受難』も手がけた

河田 純男(かわた すみお)

兵庫県立西宮病院 院長
1974年大阪大学医学部卒、大阪大学付属病院医員。1976年大阪府立成人病センター消化器内科医員。1982医学博士(大阪大学)。1983年米国、1985年英国留学。同年10月大阪大学医学部助手、1993年7月大阪大学医学部講師。1994年8月大阪大学医学部助教授。2000年7月山形大学医学部教授。2007年8月山形大学理事・副学長。2011年4月兵庫県立西宮病院院長に就任、現在に至る。第46回日本肝臓学会総会会長

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