11月号
ベトナム元気X躍動するアジア 第23回|在留外国人の動向―多文化共生社会に向けて―
最近、日本人よりも外国人が「優遇」されているという批判が表面化しています。それは、事実(理性)に基づかずに感覚(感性)に訴える政治的主張と私は思います。しかし人間は理性と感性の双方をもった動物ですから、問題は簡単ではありません。今月号は、在留外国人の最新動向を紹介します。それに関連して、日本におけるベトナム人の生活実態の一端を見てみましょう。
文・ 上田義朗
増加を続ける在留外国人数
出入国在留管理庁の最新資料によれば、日本に在住する外国人数がコロナ禍の時期(令和3年)を除いて一貫して増加しています(図を参照)。令和7年6月末時点で395万6619人。これは静岡県の全人口、奈良県と京都府を合計した人口にほぼ相当し、日本の全人口(約1億2千万人)の約2・9%を占めます。この数字の多寡の議論よりも、その内実が重要と考えられます。
日本の歴史を振り返れば、ごく少数の日本人が武力を背景に多数の外国の人々を統治した植民地や占領地の時代があり、それ以前にはアイヌ民族や琉球人に対する「同化政策」もありました。民族的な差別や偏見の事例が今日まで続き、そういった反省からヘイトスピーチ禁止の法規制があり、政府政策として「多文化共生」が定着してきています。
中国人・ベトナム人・韓国人が半数を占める
『産経新聞』(10月11日7:00配信)を引用すれば、令和7年6月末時点で「国籍別で中国が90万738人、ベトナムが66万483人、韓国が40万9584人の順」であり、直近の動向は中国とインドネシアが増加、ベトナムが減少です。
「政府は平成31年に「特定技能」の在留資格を創設。1号と2号があり、熟練技能を要する2号の場合は在留期間の上限がなく、家族帯同も可能」です。「こうした中、特定技能の1号は昨年末の約28万3千人から半年間で17%増え、33万3123人に。また、2号は昨年末の832人から3・7倍増の3073人と、大幅に増えた。1、2号の合計は33万6196人」となりました。
「在留資格別では、最多が「永住者」で、昨年末に比べ1・5%増の93万2090人。会社員などに多い「技術・人文知識・国際業務(技人国)」が9・4%増の45万8109人だった一方、「技能実習」は44万9432人で1・6%の減だった」そうです。
在留ベトナム人の減少理由は?
高い経済成長を続けるベトナムの所得水準は右肩上がりが続きます。たとえば、ホーチミン市の大卒で日本語と英語ができる人材に現地日系企業は月給15万円以上を支給。それはベトナム企業では課長か部長クラスに匹敵します。
日本において特定技能で働くと月給25万円ほどになり、残業をすれば、それ以上となります。もちろん職務に相違があり、単純に比較できませんが、日本の物価高やストレスを考えれば、日本の給与は必ずしもベトナムよりも魅力的とは言えないでしょう。また雇用主また実習先の人事管理がすべて善良とは限りません。日本人・外国人を問わずに賃金の上昇や労働環境の改善が企業の魅力増大に寄与するでしょう。
高度専門職ビザ取得のベトナム人
日本政府は在留資格「高度専門職」ビザを取得するために「高度人材ポイント制」を導入しています。私の知人の30歳代のベトナム人は年収800万円を超えますが、このポイント獲得のために日本で猛烈に働いています。
ベトナム人と言っても多様な職場・労働条件・経営環境で働いています。少し考えれば、それは日本人も同様です。ステレオタイプで人間を判断できません。人口減少が続く日本経済また日本社会を維持・成長するためには、外国人材は不可欠です。共生のために何をなすべきか?日本人に向けられた課題です。

【引用】『産経新聞』(2025年10月11日)7:00配信。
【出所】出入国在留管理庁・報道資料。
上田義朗(うえだ よしあき)
流通科学大学名誉教授
岡山学院大学・短期大学理事
日本ベトナム経済交流センター日本代表
外国人材雇用適性化推進協会(ASEO)代表理事
合同会社TET代表社員・CEO












