2024年
11月号
「オスカー・ステファンズ邸のステンドグラス・窓」イメージ イラスト/米田 明夫

近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライトを学ぶ|Chapter 6 アーツ・アンド・クラフツ運動|平尾工務店

カテゴリ:建築

平尾工務店がお届けする「オーガニックハウス」の基本的な理念や意匠を編み出した世界的建築家、フランク・ロイド・ライトについて、キーワードごとに綴っていきます。

9世紀後半の英国では、ウイリアム・モリスやジョン・ラスキンらを中心に、美術的要素を持つ工芸品などを通じて日々の暮らしと芸術を重ね合わそうという動きが生まれました。これがアーツ・アンド・クラフツ運動とよばれるムーブメントで、現代の我々にとって当たり前であるデザインという概念の発端の一つと評することができます。
この流れはやがて世界中へ広がり、フランスを中心としたアール・ヌーヴォー、インダストリアルデザインの源流とされるドイツ工作連盟、そして柳宗悦らによる日本の民藝運動などに大きな影響を与えます。
もちろん大西洋を越えてアメリカへも波及し、その中心地はフランク・ロイド・ライトが拠点としていたシカゴでした。若きライトは、師匠のルイス・サリヴァンとともにアメリカにおけるアーツ・アンド・クラフツの担い手になり、シカゴアーツ・アンド・クラフツ協会のメンバーにも名を連ねます。
しかし、ライトはアーツ・アンド・クラフツ運動の考え方をまるまる鵜呑みにしていた訳ではありません。そもそもアーツ・アンド・クラフツ運動は産業革命による工業化で大量生産された粗悪な製品のアンチテーゼが根本にあり、機械による大量生産を否定して手工芸を重視していました。ところがライトはモリスやラスキンを賞賛しつつも、機械の可能性を前向きに捉えています。そのような視点から、機械によるアートやクラフトという、工業が発展する時代に沿った新たな境地を見出したのです。
ライトがデザインしたステンドグラスは、まさにその実践と言えるでしょう。手仕事では難しい直線の造形も、機械を利用すれば容易かつ正確です。真っ直ぐの線を組み合わせた幾何学的なパターンは、ガラスの向こうに広がる風景との調和をもたらしつつ、暮らしの中にさり気なく美術的要素を添えて、アーツ・アンド・クラフツ運動が目指すところである生活と芸術の一体化を成し遂げています。

「オスカー・ステファンズ邸のステンドグラス・窓」イメージ イラスト/米田 明夫

FRANK LLOYD WRIGHT
フランク・ロイド・ライト

1867年にアメリカで生まれたフランク・ロイド・ライトは、91歳で亡くなるまでの約70年間、精力的に数々の建築を手がけてきました。日本における彼の作品としては、帝国ホテルやヨドコウ迎賓館、自由学園明日館が有名です。彼が設計した住宅のすばらしさは、建築後100年経っても人が住み続けていることからわかります。
これは、彼が生涯をかけて唱え続けてきた「有機的建築」が、長年を経ても色褪せないことの証明でしょう。フランク・ロイド・ライトが提唱する「有機的建築」は、無機質になりがちな現代において、より人間的な豊かさを提供してくれる建築思想なのです。

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