10月号
甲南中高ラグビー部コーチに アンドリュー・マコーミックさんが就任
創部100周年に向け指導体制を強化
1924年、7年制高等学校の有志学生よって初練習が行われたという甲南学園ラグビー部。2024年に迎える100周年に向け、甲南大・高・中の各OBたちが様々な面で後輩たちをサポートし、今後の永続的な発展を目指して動き始めた。中高ラグビー部にはアンドリュー・マコーミック氏をテクニカルコーチとして迎え技術力・チーム力の強化を図っている。現役時代は東芝で日本選手権三連覇を果たし、故・平尾誠二さんが日本代表監督を務めた時には、キャプテンに任命された。日本を愛し、神戸で暮らすマコーミック氏。〝アンガス〟の愛称で親しまれる同氏に、神戸への思いや中高生の指導についてお聞きした。
神戸のためにできること 私にはラグビーしかない!
―神戸在住ももう長いですね。
私は現役を引退してニュージーランドへ帰りました。子どもたちも大きくなり、「東京での暮らしは楽しかったなあ」と、奥さんと二人で日本へ戻ってきました。2012年、関西学院大学ラグビー部ヘッドコーチに就任してから13年間、神戸の六甲アイランドに住んでいます。
―甲南中高ラグビー部テクニカルコーチを引き受けた理由は?
亡くなられた平尾誠二さんとは元々ラグビーで敵同士(笑)、その後、平尾さんが日本代表の監督になり私はキャプテン。監督と選手というよりとても仲の良い友達で、二人の会話は何故かいつも英語でした。本当に残念です。平尾さんはもちろん、神戸には大畑(大介)や元木(由起雄)など友達がたくさんいることもあって、「神戸に長く住んでいるのにコミュニティーのために何もできていない。サポートできることはないかなあ」と考えていました。そんな時、南屋さんから「ぜひ参加してほしい」とすごく熱いメッセージを頂きました。家の近くの甲南大学グラウンドでラグビーの練習をやっているのを「いいなあ」と見ていたので、「私にできることはやはりラグビーしかない」と思い、引き受けることにしました。
―6月に就任されましたが、選手たちの印象は?
中高生の指導は初めてですが、純粋で素直です。でも、波はありますね。時々素晴らしいけれど、お母さんと喧嘩したかな?先生に怒られたかな?時々ダメ(笑)。
―指導に当たってどんなことに気を付けていますか。
優しくというか…、「こうしなさい!」と命令するようなことはしません。今はグロウイングアップの時期、大人になっていく途中ですから、言葉の選び方や言い方には気を付けています。時々、英語で話すと子どもたちはすごく喜んでくれます。
―練習中、どんな声をかけているのですか。
言葉で1回、2回言っても理解はできません。練習中、体を動かしているときに同じことを繰り返し声をかけるようにしています。
―甲南学園創立者の平生釟三郎先生がジェントルマン育成に選んだのがラグビーです。
私の地元カンタベリーでは「いいキャラクターの人間はいい選手になる」と言われています。何故かというと、自分のことより先にチームのことを考えなくてはいけないからです。チームの中で自分の役割を考え、行動しなければ、勝つことは出来ません。それを理解しているのが「ジェントルマン」だと思います。
―中高生のラガーマンにとって大切なことは?
若い選手はまず「楽しく」が大事。勝つ経験、負ける経験どちらも同じ態度で受け止められること。人生と同じです。とは言っても、ラグビーをやるからには勝ちたい気持ちは大切です。勝つ楽しさは他の楽しさとは全然違いますから。勝つためのハングリーな気持ちをどう持たせるか?私たちの今のテーマです。
―これから甲南のラグビーチームに入りたいという生徒たちに一言お願いします。
ぜひ来てください(笑)。監督も選手もみんな友達。そんな深い関係が大人になってもずっと続くのがラグビーの良さです。
100年の伝統を未来へ
この度は、甲南大・高・中の各OBの皆様のご尽力、そして早駒運輸・渡辺真二社長からご縁を頂いて、〝あの〟アンドリュー・マコーミックと甲南の縁を結んでいただきとてもありがたく、ラグビーは人と人のつながりが広く深いスポーツだと改めて感じています。
アンガスの指導のポイントは単純明解。例えば「今日はアタック」と決めたら、練習はそれだけ。私は反復練習が大事だと思って欲張ってしまうのですが、彼は生徒たちの集中力を持続させることを考えているのでしょうね。
輝かしい経歴を持ち、自分のラグビー観をきちんと持っておられるはずですが、やりたいことがある時でも独断で推し進めたりはしません。「どう思う?」と必ず私に聞き、意見が合わないときには話し合う時間を取ってくれます。お陰で役割分担が自然に出来上がっています。生徒たちは楽しくやっています。「コーチに対してフレンドリー過ぎないか?」と思うのですが、そういう年頃なのでしょうね。
甲南ラグビー部には二世、三世の生徒もいます。保護者の方から「第二の青春をありがとうございます!」と言っていただき、嬉しいのと同時に伝統の重みを感じています。100周年に向け、「花園を目指す」というのはチームとしての大きな目標です。もう一つ個人の目標は「いかに周りの状況を良くするか」。伝統を未来へとつなぐために「後輩たちに何を残せるのか」を考えてほしいと思っています。今、上級生たちがこの思いを受け止めて最高の自分を出し切り、周りに活力を与えてくれています。心強い限りです。
甲南高等学校中学校ラグビー部
テクニカルコーチ アンドリュー・マコーミックさん
PROFILE
ニュージーランド出身。1993年東芝府中入団。1996~98年日本選手権三連覇。1996年日本代表に選出。1998年、平尾誠二氏監督時の外国人選手では初の日本代表主将に選ばれ、ワールドカップ1999に出場。2000年東芝府中ヘッドコーチ就任、以降複数のチームで指導