2022年
10月号
10月号
竹中大工道具館 叡智の彼方へ|第一回|
実物大の力
唐招提寺金堂
組物模型
古代建築はとてつもなく大きい。かつ逞しくて格好良い。しかしそれは小さな道具を使って木材を自在に加工し、機械も無いのに重量物を持ち上げ組み上げていく大工の知恵と技の賜なのだ。
そんな魅力を伝えたいと思い、国宝・唐招提寺金堂の「三手先組物」の実物大模型を造り、シンボル展示として吹き抜けの大空間に据えました。
「三手先」とは腕のかたちを模した肘木という部材が軒を支えるため外側に三つ分飛び出すという高度な構造形式で、日本建築では最高の格式を持っています。製作は現代の名工・小川三夫棟梁が率いる宮大工集団・鵤工舎によって当時と同じ道具(ヤリガンナやチョウナ)を用いて再現されました。材木も実物と同じ国産のヒノキを用いています。
模型の脇には3Dモデリングで作った木組みの分解アニメーションを設置しています。一四〇点近くの部材が順番に積み上がっていく様は圧巻なのですが、一二〇〇年前にこのような複雑な木組みの技術が存在したことにも驚きます。
大工道具の博物館なのに、寺院建築の巨大な模型が⁉と多くの来館者が驚かれますが、道具の魅力は建物を通して理解することが一番の早道。ぜひ実物をご覧いただき、その迫力を体感していただければと思います。
(主任学芸員・坂本忠規)
竹中大工道具館
TAKENAKA CARPENTRY TOOLS MUSEUM
神戸市中央区熊内町7-5-1
Tel.078-242-0216
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
開館時間:9:30~16:30(入館は16:00まで)
https://www.dougukan.jp/