2月号
自然と歴史が彩る芦屋のサンクチュアリ
芦屋神社 宮司 山西康司さん
その暮らしやすさで全国に名を馳せる芦屋が、邸宅街として開発されるはるか昔から、この地を見守り続けてきた芦屋神社。緑の木立に野鳥たちが囀る境内では、今日も参詣客が静かに手を合わせている。芦屋の鎮守として地元の人たちの崇敬を集めて千年以上の時を刻んできた。
今も昔も住みよい土地
もともとこのあたりは丘の一番上で、それより上は森、下はみかん畑やコバノミツバツツジの名所でしたが、大正の頃から阪神間モダニズムがおこり、芦屋は美しい砂浜が広がる美しい景観からコートダジュールになぞらえられて別荘が建ちはじめ、それが浜の方から川沿いに上がってきました。その代表格がフランク・ロイド・ライト建築の旧山邑邸ですね。その後、奥池や六麓荘が開けてきたのです。
芦屋は芦の生い茂る湿地帯がその名の由来で、太古には尼崎から生田川にかけて菟原や芦原といわれていたようです。芦屋の屋は家ですので、その頃から人々が住み着いていたのでしょう。芦屋には古墳が多く、浜の方だけでなく、丘の上にも多くみられます。標高85mになる当神社の境内にも横穴式の石室古墳が残っていますが、その頃からここに集落が存在していたのでしょうね。平安時代にはここから山を越えて有馬に向かっていたようです。
人に、街に、愛される神社
芦屋神社の創建は定かではありませんが、六甲山頂近くにここの神様の磐座があります。磐座の祭祀となると数千年遡ることになりますが、少なくとも古墳時代後期から飛鳥時代にはこの地は聖地だったと思われます。その後幾度か戦場にもなり、焼き討ちにあったこともありますが、そのたびに地元の人々の力で再建されてきました。
芦屋神社は多くの人に親しまれています。巨人軍の常宿は芦屋ですが、長嶋茂雄さんは若い頃からトレーニングを兼ねて来られました。境内で休憩されるのですが、周りの方に気さくに声をかけてくださったそうです。
お正月は多くの方が初詣に来られ、厳かに新年を迎えます。春には春祭を芦屋市のさくらまつりとあわせて開催します。10月の秋祭に先だって、芦屋神社の氏子地域では3基のだんじりも出るんですよ。今年の3月には約40年ぶりに鳳輦を復活させます。鳳輦とは雅やかな神輿車で、しずしずと巡行します。
自らの価値を高める芦屋文化
近代になって豪商や学者、官僚などが住むようになって自ずから文化が高くなり、欧米文化を採り入れながら独自の芦屋文化が築かれました。規制緩和に流れるのが市民の考え方として普通ですが、芦屋文化は逆で、市民が行政に縛りをかけていくのですね。でも、そのおかげで芦屋の雰囲気は守られ、芦屋川を世界遺産に登録しようという動きもあるようです。
中でもこの街の方々はそんな豊かな自然や住環境を維持しようとする意識が高く、ご自身も努力されます。敷居が高いように思われますが、マナーさえ守ればすぐにとけ込めると思います。若い方が入ってこられるのは街にとってもプラスです。
大阪へも神戸へも1時間かからない便利な場所でありながら、自然と静けさが守られ、春になれば境内でウグイスが鳴き、駅までそぞろ歩くだけでも季節感を味わえます。芦屋の中でもこれだけ好条件の場所は、ここが最後なのではないでしょうか。
芦屋神社
芦屋市東芦屋町20-3
TEL.0797-34-1833
http://www.ashiyajinja.or.jp