2026年
1月号

未来の担い手に神戸スイーツの本質を問う 第6回 神戸ガレット・デ・ロワ コンテスト

カテゴリ:スイーツ・パン, 神戸

果たして入賞はどの作品か? 厳正なる審査に密着した。

11月18日、『第6回 神戸ガレット・デ・ロワ コンテスト』が「神戸北野ノスタ」で実施された。審査員を務めるのは、神戸の洋菓子業界をリードしてきた重鎮や、神戸を代表するパティスリー及びブーランジェリーのオーナーシェフ、技術指導者の皆さん。錚々そうそうたる面々が審査し、優秀作品を選考。入賞者は1月9日~12日に神戸阪急で開催される『みんなのガレット博覧会』にて表彰され、全作品が展示される。

審査基準を進化させて
より納得のいく審査を

 (一社)兵庫県洋菓子協会と(公財)神戸ファッション協会が主催する『神戸ガレット・デ・ロワ コンテスト』の6回目。今年はガレット・デ・ロワに13作品、クーロンヌ・デ・ロワに6作品が出品され、審査員が様々な基準から総合的に判断。各部門の優秀作品を選出した。
 兵庫県洋菓子協会副会長の栗原栄德氏は「昨年、審査員から出た意見を加味して今回は、審査終了後に参加者と審査員が交流する機会を設けた。審査順位だけでなく、どこが良かったのか、改良点は何なのか。さらなる技術向上に活かしてもらえれば」と話す。「神戸北野ノスタ」でクリスマスケーキコンテストと同時開催するのも初の試み。相乗効果でガレットやクーロンヌの認知度アップやコンテスト応募の拡大も狙うという。
 審査基準にも変更があった。「ガレット・デ・ロワ」はサクサクのパイ生地とコクのあるアーモンドクリームの組み合わせの妙を特徴とする焼き菓子。コンテストでは、その伝統的な構成に忠実に、かつ高い技術で表現できているかがポイントに。SNSの普及により「映え」は既に重要なトレンドとなっているが、見た目は技術や味と連動するため、あえて分離せずに統合的に評価。焼成やクリームとパイ生地のバランス、一体感など、味わいを評価の核とした。
 一方の「クーロンヌ・デ・ロワ」はガレットのように生地に加える素材が限定されておらず、素材感と技術力の評価が難しい。そのため今回から生地量に対してフィリングが30%以下という新規定を設定。こちらも生地の美味しさに焦点を当て、審査が行われた。

伝統に込められた想い
基本に忠実に作り込む

 「ガレット・デ・ロワ」の審査では、基本への忠実さに関する意見が多く出た。シンプルなお菓子だからこそ、明確な素材感の表現と焼き加減の見極めが大切。髙杉氏は「焼きのタイミングがとれていない作品が一部に見られた。生地のストレスを抜いてから窯に入れるなど、すべてに細やかな神経を使う必要がある」と提言。背景には働き方改革などによる時間的な余裕のなさも影響しているのではないかと分析した。ル ビアン・ミッシェル氏も「焼き具合の甘いパイはパンチが足りない。逆に焼きすぎると硬く、見た目が月餅のよう」と語る。ビゴ・ジャンポール・タロウ氏は「ピースに隠れたフェーヴ(人形)を見つけるスイーツゆえ、ナイフで切り分けやすいよう表面をキャラメリゼしないのがトラディショナル」と伝統を守る大切さを説いた。
 「ガレット・デ・ロワ」を総評して、林氏は「回を重ねるごとに参加者のレベルが向上している」とパティシエのレベルアップにつながっている手応えを語る反面、使用素材が限られているため、順位決定の難しさがあることも指摘。「だからこそ素材の味や香りを最大限に引き出せているかがポイントに。そのための基本がしっかりできている作品が上位に選ばれた」と語る。例えば、基本プロセスの一つ焼成は“焼く”のではなく“焼き切る”。 ただし焼き過ぎると焦げ臭くなり、焼き加減による生地の水分量で口当たりも左右される。「入賞作品は全体的にまとまりがあって美味しかった。手間をかけてきちんと作りこんできたと感じられる」と高く評価した。

多様な作品が揃った
クーロンヌの可能性

 「クーロンヌ・デ・ロワ」の審査について、西川氏はエントリー数こそ少ないが、6作品とも全く違う表情の作品が出揃ったことに注目。「優勝作品はブリオッシュ生地に加えた素材のアレンジが巧妙。素材の組み合わせ、レシピの完成度、デザインセンスも優秀で、全体的なバランスの良さが評価されて結果に結び付いた」と語った。その一方で入賞は逃したが革新的なアプローチをした作品にも多くの審査員がコメントを寄せた。甘いクーロンヌ・デ・ロワのほか、塩味のクーロンヌ・サレも出品が可能な部門ゆえ、レストランのシェフも参加。フィリングのビーツが色鮮やかな生地や燻製の香り付けなど、パティシエやブーランジェにはない料理人的な発想に、「どのようにして仕上げたのか?」と皆で考察する場面も見られた。コンテストでは既存のレシピから飛び出した個性的な作品よりも、万人に受け入れられやすい美味しさが有利に働く側面がある。確実な美味しさか、未知の斬新さか。その点数配分は今後の審査基準の課題になりそうだ。
  西川氏は様々なアレンジの可能性を秘めるクーロンヌ・サレを神戸発で成長させ、全国展開をめざしたいと言う。「ブーランジェのみならず、パティシエや料理人の皆さんにも商品やメニューとして展開していただくことで認知度が高まり、各々で客層の幅も広がる。そうやって神戸から日本の新たな食文化を作っていくことが出来れば、素晴らしいことだと思う」と、未来への期待を語った。

美味しいことが大切
本質を問うコンテスト

 国内外で様々なコンテストが開催されるなか、『神戸ガレット・デ・ロワ コンテスト』では、“美味しいかどうか”が最重要基準になっている。「映え」の時代、多くの人に注目されるためには着飾ることも必要だが、「見た目」だけが先行しないで、食べものづくりの本質である“美味しいものを作ろう!”という想いを、コンテストを通じて伝えたいから…と審査員は口を揃える。
 「洋菓子の街」「パンの街」として知られる神戸における伝統菓子のコンテスト。奇をてらったアイデアではなく、基本に忠実で丁寧な仕事がされているか。伝統を守りつつも流行やブームで終わらずに、皆に求められる普遍的な存在になる。そのためには後味の軽やかさなど、現代の食のニーズに合わせた工夫がなされているかも大切だ。
 第6回では、未来の神戸の食シーンを支えるパティシエやブーランジェ、料理人たちに今一度、「美味しさの本質を問う」審査が行われた。毎回、少しずつ進化する具体的な規定によって可能性や工夫を探求してもらうことで、魅力的な作品のアイデアを考える機会を創出する。審査員や参加者の想いが神戸の未来を動かし、神戸発の文化創造につながっていく。昨年にも増して、美味しさへの情熱あふれるコンテストとなった。

審査員の皆さん。(一社)兵庫県洋菓子協会副会長、「パティスリークリ」栗原栄德氏(前列中央)。前列左から「パティスリーモンプリュ」林周平氏、「ル ビアン」ル ビアン・ミッシェル氏、「本高砂屋」髙杉良和氏、中列「ドンク」佐藤広樹氏、「カスカード」入江敏功氏、「イスズベーカリー」井筒大輔氏、「ラ・ピエール・ブランシュ」白岩忠志氏、後列「ビゴの店」ビゴ・ジャンポール・タロウ氏、「レコルト」松尾裕生氏、「ブーランジェリークスパン」楠田法久氏
※「サ・マーシュ」西川功晃氏と「AKITO」田中哲人氏は集合写真撮影時、一時離席のため写っていません

平たく丸いパイ生地の「ガレット・デ・ロワ」はフランスで新年のお祝いに欠かせない伝統菓子。リング状のブリオッシュ生地の「クーロンヌ・デ・ロワ」は甘味と塩味、両方が出揃った


神戸ガレット・デ・ロワ コンテストとは?

2021年からスタートした神戸独自のコンテスト。新年を祝うフランスの伝統菓子「ガレット・デ・ロワ」の製作を通じて、若手パティシエやブーランジェの育成・研鑽、神戸地域での普及啓発をめざす。2022年からは「クーロンヌ・デ・ロワ」も審査対象に。入賞者は神戸阪急恒例のニューイヤーイベントで表彰、作品を展示。イベントでは多様な神戸ブランドのガレットやクーロンヌを販売し、「洋菓子の街・神戸」「パンの街・神戸」をPRする。

2024年「みんなのガレット博覧会」の様子


「焼きが味を左右」とルビアン氏

真剣な表情で一つひとつの作品と向き合う審査員の皆さん

「基本力の差が結果に出たと思う」と林氏

「伝統菓子の文化を理解することが大切」とビゴ氏

焼成やデザインをじっくり見たのち、味わいを試食して審査

「サ・マーシュ」西川氏と(右)「AKITO」田中氏(左)。各々の見解を意見交換

生地に混ぜたビーツが色鮮やか

参加者へのコメントも細かく記入

神戸ファッション協会が「ひょうご国」の取り組みで実現した「洋菓子」×「三木金物」のコラボナイフ。切れ味が抜群で、試食用の切り分けに大活躍! 市販化が望まれている

「ガレット・デ・ロワ」部門に応募したパティシエ。審査発表後、作品の一般公開中に栗原氏からアドバイスを受ける。子ども時代からガレットに親しむビゴ氏が彼女の作品を推していたことも伝えられ、笑顔をのぞかせていた

今年は学生部門もあるクリスマスケーキコンテストと同時開催。未来のパティシエをめざす学生さんたちは「この模様はどうやってつけているの?」など作品に見入っていた

入賞したのはこちらの作品

クーロンヌ

「クーロンヌ」部門で2位と僅差で勝ち抜けたのは石窯パン工房マナレイア野口店の岡野吉高さんの作品。
バターが香るブリオッシュ生地に混ぜ込まれた紅茶やリンゴなど素材感の表現が素晴らしい!と高い点数をつけた

㈱ドンク
佐藤博紀さんの作品

ガレット

「ガレット・デ・ロワ」部門で見事1位になったラ・スイート神戸 オーシャンズガーデンの富山佳奈さんの作品。焼成、レイヤージュ、クリームとパイ生地の構成比、すべてのバランスが良く、美味しいと評価された

㈱ドンク
今枝幸暉さんの作品

㈱ドンク
石塚雅士さんの作品


みんなのガレット博覧会
~2026神戸ガレット・デ・ロワ~

期間:1/9(金)~12(祝・月)
会場:神戸阪急 本館9階 催場

コンテスト入賞者の表彰式や、有名店のガレットの販売、ガレットの魅力を紹介するイベントが盛りだくさん!

詳細はこちら:
https://kfo.or.jp/kobegalettedesrois/

月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

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