2025年
4月号
4月号

神戸のカクシボタン 第136回 地元にまつわる妖怪・UMA・生物の謎を探る!! 『ひょうご五国の怪物たち 摂津・島村蟹』
近年、「怪談シナリオの作り方」を各地で開講している。書き始めるにあたり地元に語り継がれる伝承をリサーチしながら物語に必要なプロットを作成していく。以前、歴史研究をする高校生から尼崎市大物に伝わる顔のような甲羅を持つ「島村蟹」の話を聞いた。この話を聞いて真っ先に想像したものが「ヘイケガニ」だ。甲羅の模様が怒る人面に似ていることで知られ瀬戸内海や九州沿岸に生息することから「壇ノ浦の戦い」(1185年)で敗戦した平家の亡霊が憑依したと恐れられている。豊前では入水自殺した平清経(清経蟹)、兵庫では元弘の変にて海で死んだ秦武文(武文蟹)と各地で様々なエピソードや呼び名が伝わる。ちなみに「島村蟹」は戦国時代、室町幕府の実権を握った細川氏に由来する。内部での対立に伴い尼崎で戦火を交え多くの犠牲者を出した「大物くずれの戦い」。この戦いで野里(当時の淀川河口支流)にいた武将・島村貴則は敵二人を両脇に抱え河川へ身を投げ無念の死を遂げた。それ以降、河底に眠る怨念が武者顔の甲羅を持つ「島村蟹」となり辺りで見られるようになった。今では、そんな壮絶な争いが想像できないぐらい下町風情漂う穏やかな街並み。ちなみに「戦い」と言えば今年から阪神タイガースが二軍の本拠地を構えるのも「大物」だ。熾烈なペナントレースが始まる球場の近隣には戦跡の石碑がひっそりと息衝く。

尼崎市東大物町1-4
岡力(おか りき)
放送作家・コラムニスト・イラストレーター、ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆、番組を企画。日本放送作家協会関西支部事務局長・大阪芸術大学短期大学部客員教授、心斎橋大学・神戸電子専門学校講師。