3月号

近代化産業遺産「湊川隧道」から始まる日本酒の物語 「隧-ZUI-貯蔵プロジェクト」の 軌跡を辿る
きっかけは神戸港からだった
2017年、神戸開港150年を記念して地場産業の振興と日本酒文化の促進を目的に、早駒運輸、神戸酒心館、湊川隧道保存友の会の3者が主導し、貯蔵酒プロジェクトを始動。2019年に「国登録有形文化財」に登録され、その偉大なる歴史的近代土木建築に国内外から注目を集める、日本初の河川トンネル「湊川隧道」で貯蔵した「SAKE from KOBE-KO」(純米酒)が販売された。本プロジェクトは神戸のヒストリアンこと田辺眞人氏が監修し、ボトルには神戸シーバスオリジナルブランド「boh boh」のセーラーがデザインされ「みなとまち神戸」を華やかに祝福した。先人たちのものづくりにかける情熱、歴史の香りを多くの方に堪能してもらいたいという想いから一大プロジェクトがゆっくりと波を立て動き始めた瞬間だった。2020年5月、新たに兵庫県が加わり4者での連携協定を締結。5年間の湊川隧道における壮大な「日本酒貯蔵プロジェクト」が再始動し、そのサスティナブルな取り組みは、歴史的資源を守り後世へと繋いでゆく上で重要な地域貢献活動を担っている。
天然のカーヴで180日間熟成させる唯一無二の製造法
人工的な空調や温度管理に一切頼らず、気温約15度と安定した天然のカーヴで半年間熟成蔵する過去に類を見ない革新的な酒造り。担当した杜氏も「これまでにない経験」と蔵出しを見守った。発足年の11月、まろやかでフルーティーな味わいが特徴の記念すべき初代「隧ZUI」が誕生した。意匠となる「隧」の字は早駒運輸ブランディングプロデューサーを務める渡邉美香が揮毫し、北斎ブルーの様な海をイメージした色を顔彩の藍色と金粉の調合を何度も重ねデザイン。神戸らしく錨マークをあしらいワインラベルのように仕上げ、世界へ向け年間3,000本限定(720㎖瓶)という希少性の高い日本酒がここに完成した。
2025年、新たな「隧」ストーリーが始まる
初代「隧ZUI」が誕生してから5年の歳月が流れた。5年間で蔵出しされた計15,000本とは別に、裏では毎年、純米酒、純米吟醸の一升瓶(各117本)は蔵入れしたまま貯蔵が続けられている。アニバーサリーイヤーとなる2025年。いよいよその古酒ともなる初代の蔵出しが計画されている。この比類なき日本酒がこれからどのような色、艶、味わいに変革を遂げるのか期待が高まる。ラベル意匠を揮毫した渡邉美香さんにプロジェクトを振り返っていただいた。「隧道での5年にわたる壮大なプロジェクトに携わり、その行く末を見守ってきた貯蔵酒にロマンを感じています。現在、次なる新しいZUIのコンセプトを構想し、ボトルのエチケット部分には世界的アーティストとのコラボも検討しております。皆様にお披露目できる日を心待ちにしております」。
次なる「隧」はどこへと続くのか。神戸の老舗企業と歴史的遺産が織りなす新たな神戸の歴史物語が始まろうとしている。

ラベルカラーリングは白、赤、紺、ターコイズグリーン、紫から成る日本の高貴色を使用

2017年SAKE from KOBE-KO
神戸港からプロジェクトは始まった