7月号
今月の映画と本
海外の映画祭で絶賛!
父・藤竜也、息子・森山未來
『大いなる不在』
認知症を患った父と両親の離婚によって疎遠だった息子が、父の逮捕をきっかけに再会する。5年前、25年ぶりに会ったときとは、まるで別人の父。しかも再婚した女性は行方不明。息子は自ら真実を探り始める。
以前、本誌の取材で藤竜也は認知症について、「人間の知能は衰えるけれど、その人が生きてきた道は消えない。誰も人を傷つけてはいけない」と話した。その作品で患ったのは友人だったが、今作では自身が認知症に。藤が演じる遠山陽二の姿に、藤の言葉が重なった。彼の“道”に深く存在し続けた純愛の物語は、次第に卓の心を動かす。
キャスティングについて近浦監督は「藤竜也と森山未來を同じフレームの中で対峙させたかった」と、脚本の段階から2人が脳裏にあったと明かす。サンフランシスコ国際映画祭で“最高賞”を受賞。やっと日本で観ることができる。
監督・脚本・編集:近浦啓
出演:森山未來
真木よう子 原日出子/ 藤竜也
製作・制作プロダクション:クレイテプス
配給:ギャガ
©2023 CREATPS
2024年7月12日(金)
全国順次公開
公式サイト
第5回大藪春彦新人賞受賞作家の長篇デビュー作!
『贋品』
この話は、ミナミにある老舗の珈琲屋から始まる。“元画家”の男と“働いとらん”34歳の男。テーブルの上にあるのは、オランダの美術館から盗まれたピカソの記事。この状況で、「十億ほど、稼いでみぃひんか」。
男たちの服装や姿勢、声、老舗店独特の匂いまで想像させられたところで、この怪しい企みが動き出す。
この2人、ピカソの贋作を作り始める。現代の贋作づくりは、科学、光学の最新技術が必要で、彼らはコワイ人から軍資金を調達、さらにもっとコワイ、西太后なみにコワイ、中国のメガコレクターと交渉を始める。真贋を見分けるのもテクノロジー。失敗したら死ぬしかないこの計画は止めることができず…。
お金があれば贋作が作れてしまう?真贋は数字で判定?新しいアートサスペンスは多くの不安を残す。
著者:浅沢英
定価:2,200円(税込)
徳間書店
text.田中奈都子