6月号
Movie and CARS|シトロエン 2CV
映 画:『恋人たち』 1959年 フランス
登場車両: シトロエン 2CV
CITROEN 2CV
文・株式会社マースト 代表取締役社長 湊 善行
ジャンヌ(ジャンヌ・モロー)は、新聞社を経営する夫アンリ(アラン・キュニー)と結婚して8年。可愛い娘と裕福な生活を送っているが、仕事中心のアンリに不満を抱いていた。ジャンヌは月に二度パリに行き友人のマギーと会うことが楽しみであり、また、パリの社交界で出会ったポロの名手ラウールへの想いも逢う度に強くなるのだった。アンリはジャンヌのパリ行きに疑念を抱き問いただす。ジャンヌは友人マギーとラウールが恋人同士と偽るように依頼し、邸にふたりを招き夫のアンリに潔白を証明しようとする。そのパリからの帰り道でジャンヌのプジョー203が故障、通り掛かった青年ベルナールのシトロエン2CVで自宅に送ってもらう。既にマギーとラウールは到着しており、ベルナールも一緒に食事、邸に泊まることになる。皆は早朝から釣りに行くために早くに寝室に入ったが、ジャンヌはベルナールのことが気になって眠れない、ベルナールも眠れずにいる。戸外に出たジャンヌを追うようにベルナールも外に出る。二人は銀色の月明かりと夜風に誘われ広い庭を歩く。川の小舟に乗ったジャンヌとベルナールは身体を横たえる。そして寝室に戻り一夜を過ごした。ジャンヌは今までの生活とラウールとの関係も清算すると決めて、アンリとマギーとラウールの前を通り過ぎてベルナールの2CVに乗って家を出て行くのだった。爽やかな風と朝陽を受けたジャンヌの表情には希望が溢れているが、朝食に寄ったレストランの鏡には、地位もお金も娘も失った不安な表情が映しだされている。再び走り出した二人に朝の光が眩しいが、昨夜のような幸せな夜はまた来るのか、と不安がよぎる。だがジャンヌは決して後悔しない。アンリ・ドカエのカメラワーク、ブラームスの音楽はジャンヌの魅力を引き出す。刹那的で頽廃的な一面と、月明かりに映し出されるジャンヌの美しさ、男女の感情の機微を表裏に持たせた。ルイ・マル監督の20代の作品であるが心理描写が素晴らしい。