12月号
未来を駆ける神戸の新風 VOL.7|Q・B・B ベビーチーズ 誕生から 半世紀!
その価値をさらに高めて ファンを生み育てる挑戦!
創業から75年、去年にはQ・B・Bベビーチーズ発売から50年を迎えた六甲バター株式会社(神戸市灘区)。世界初のスティックチーズが人気を博し、個包装スライスチーズを国内で初めて製造販売するなど、常に業界のリーディングカンパニーだ。
そんな六甲バターが看板ブランドである「Q・B・B」の価値発信を強化し、新たなファンづくりに乗り出した。そこにかける想いと、将来を見据えた新たな取り組みについて、社長の塚本浩康氏に話を伺った。
ファンサイト運営に妊婦をターゲットにした展開!
新戦略の狙い
去年、Q・B・Bベビーチーズ発売から50年を迎えました。御社にとって、Q・B・Bブランドとはどのようなものでしょうか?
50年間も売り続けている、我々の主力商品であるとともにお客様との信頼を示すものです。Q・B・Bブランドなら食べて安心、絶対に美味しい、決して裏切らない品質というものを示しているブランドだと自負しています。
今後、ブランドの価値を上げていく、という発表もありました。
はい。これまでは、「食べて健康に良いものですよ」という程度の発信はしていましたが、もっと踏み込んで、「Q・B・Bベビーチーズは一生懸命頑張る人を応援する商品なんです」とメッセージを打ち出すことにしました。そして、今後は、「Q・B・Bベビーチーズってこういうものなんだよ」といったコミュニケーションを改めてしっかりとらせて頂いて“ファンを生み育てていこう”と考えています。
具体的にどういった取り組みをされていますでしょうか?
去年6月、「Q・B・Bチーズパーク」というオンラインコミュニティのファンサイトを構築しました。
我々は商品を作ってそれを販売しているんですが、メーカーの特性として、消費者の方と直接売買をするわけではないので、食べた方の感想を直接聞くことができる機会が少ない、というのが課題としてありました。今までは、それでも世の中のニーズを想像しながらお応えしてきたつもりなんですけども、こういうサイトがあるとお客様の生の声が、直接我々の方に入ってきます。これを、商品づくりであるとかサービスに活かせると考えています。実際、まだ、このサイトから新商品は生まれていませんが、アイデア会議の場には挙がってきています。ファンサイト発の商品が、これからできれば良いなと思います。
「一生懸命頑張る人を応援」という点では、2021年からは「妊婦さん応援企画」を実施されていますね。
ベビーチーズを愛して下さって、一生続くようなお付き合いをしたいと考えた時に、我々の調査で多くの妊婦さんが弊社の「チーズDE鉄分ベビー」を食べて下さっていることが分かりました。それでもっと妊婦さんに寄り添ったことが出来ないかとこの企画を考えました。
妊娠中は、とても大切で大変な時期です。こういった時に、「チーズDE鉄分」を食べた、という体験はすごく記憶に残ると思うんです。そしたら、お子さんが生まれて少し大きくなったら、「またベビーチーズを買って子どもと一緒に食べよう」となるかもしれない。さらに、その子どもが大人になったとき、ベビーチーズが身近にあって、同じようなサイクルが生まれて長いお付き合いができるのではないかと思い描いています。
期間限定で、妊婦さんも楽しめるバー「ニンプバー」という展開もありました。
やっぱり、実際に妊婦さんのお声が聞け、喜んで頂けていることを実感できたのが良かったです。具体例を出すと、日頃、窮屈な思いをされている中で、発散できる場となり、すごく開放的な気持ちになれたみたいなお声がありまして、こういったことを聞くと、誰かの役に立てて良かったと思いますし、こちらの励みにもなりました。
ヒットの理由は個包装!
ロングセラーの秘密を聞いた
そんな新たなファンへのアプローチもされている中ですが、そもそものロングセラーの秘訣は何でしょうか?
色んな要素がありますが、一つは個包装にしたことです。我々は、1948年に農林省指定のマーガリン製造工場として創立し、正確な記録はありませんが、個包装にした給食用のマーガリンを手掛けていたと聞いています。つまり、Q・B・Bベビーチーズを発売する前から、小さくものを包んで個人のお客様に提供することを行い続けてきた企業でした。それを活かして、1人1人のお客様にしっかりとそれぞれの商品をお届けする、というDNAが根本にあり、ベビーチーズが生まれています。
そして、四角い個包装にしたことにより、売り場で平積みができるので、お客様には面で見えて手に取って頂く機会が増えています。そして、スーパーさんにとっても、並べたときに隙間ができないので、販売効率が良いというメリットも生まれました。
面で見える、というお話がありましたが、その面の中で、色んな味が並んでいるのも消費者として楽しく感じています。
バラエティー展開も2000年代から始めました。最初はベーシックな1~2商品から始めたのですが、好評でバリエーションが増えていきました。今では15商品くらいに増えています。プロセスチーズは、ナチュラルチーズを溶かして固めるんですが、形や味に変化を出せるのが特徴です。
仰るように、選べる楽しさや、さっき妊婦さんのことでも言いましたが、用途に合わせた選び方ができるのもベビーチーズの強みです。
バリエーションで言うとチーズデザートが好調ですね。
実は、シリーズとしては発売から14年が経っているんですが、とろけるような食感と滑らかな舌ざわりにこだわって作り、当時は、これまでにない、新しいものを生み出した商品でした。さらに、“大人の女性”をターゲットに打ち出したのがヒットの要因だと思います。
大阪・関西万博に向け、環境問題にも焦点!
次なる新商品は?
2025年、大阪・関西万博に向けてプラントベースチーズ(植物性代替チーズ)を開発されました。この狙いを教えて下さい。
近年、Z世代と呼ばれる若い人たちが世の中に影響を持ってきています。そういった方を中心に、環境負荷についての関心が高まっています。
そんな中で、乳製品の原点となる牛はメタンガスを出すということで問題視されています。つまり、チーズは非常に環境負荷が高い食べ物であると見られており、我々にとっては大きな課題になっています。
そういったところを考えたときに出した答えの1つがプラントベースでした。ただ、これにも問題がありまして…。プラントベースって、何となく美味しくなさそうなイメージがありますよね? でも、Q・B・Bとして出すのであれば、やっぱり、思わずお腹がグーッって鳴るくらい美味しいものを出さないといけません。そして、認知度を高めるきっかけとして、万博までにはしっかりと発信できるようにしたいと現在、開発を重ねています。
プラントベースフード市場の見通しはいかがですか?
すぐさま儲けに直結はしないかもしれませんが、将来的には次第に大きくなると思います。さらに、もっと考えると、このビジネスは、みんなが環境のことを考えている中でやるなら、植物からできるものを使う方が良いし、社会的意義も大きいという、我々の企業としての回答でもあります。
我々としては、とても美味しいプラントベースの商品を、どんどん世に送り出していきたいと考えています。
御社にとって神戸とはどういった街でしょうか?
先日、市長とお会いしたときに仰られていましたが、港があって、いろんな人が入り続けてきたからある、と。なるほど! と思いましたね。私自身も、神戸の良いところは、色んなものを受け入れて自分のものにして発信するところだと感じていました。そう、神戸は昔から多様性に満ちて、先進性がある街でした。そんな土壌があるからこそ、色々な文化も生まれたと思うので、我々も、色々な刺激を受けながら、先ほどお話したプラントベースを含めて新たな価値を神戸から発信していきたいと思います。
六甲バター株式会社
代表取締役社長兼CEO
塚本 浩康 (つかもと ひろやす)さん
1975年8月5日生。兵庫県神戸市生まれ。2000年4月に六甲バター入社。2012年4月に購買部長、2013年3月に取締役稲美生産部長に選任。以降様々な部署を経て2021年3月に代表取締役社長就任。2023年3月代表取締役社長兼CEOとなる。趣味は茶道とゴルフ。
〈プロフィール〉
蔭岡翔(かげおか しょう)
放送作家・脚本家
神戸市東灘区在住。関西の情報番組や経済番組などを企画・構成。日本放送作家協会関西支部監事。日本脚本家連盟関西地区総代
〈取材を終えて〉
マーガリン製造から始まった六甲バターは、社名にバターを冠しているものの、実は一度もバターをつくったことがないそうだ。当時はマーガリンが「人造バター」と呼ばれていたことが社名の由来だが、塚本信男の、「六甲山の麓で、いつか牛乳からバターをつくりたい」という強い願いが込められているそうである。
この創業者の情熱を大切に受け継ぎながら、美味しく品質の高い商品が生み出されてきたのだと、取材をしながら感じた。実際、開発の現場に長くいた塚本社長は、今でも開発商品は必ず口にして、自身が「美味しい」と感じたものしか世に出さない。
そんな六甲バターが新商品として「アイスクリーム」の販路拡大を来春に予定している。応援購入サイトMakuakeで先行販売され大変好評だったそう。六甲バターのアイスクリーム…来年のアイスクリーム売り場が楽しみだ。
六甲バター株式会社
神戸市中央区坂口通
1-3-13
TEL.078-231-4681(代表)
https://www.qbb.co.jp/