11月号
KOBECCOオススメ 〜CINEMA〜
人間たちの苦難を包む、美しき森
栗の森のものがたり
戦争で故郷を追われ、放浪をよぎなくされた人々や、帰らぬ家人を待つ家族たち。苦しみを抱えて生きる人間を包むのは、太陽の光や月灯り、そして森の木々たちや、全てを洗い流すかのような川だ。1950年代、イタリアとユーゴスラビアとの国境に位置する栗の森を舞台にした物語は、何があっても変わらぬ美しい自然や苦悩に満ちた人々を印象派の絵画のように映し出す。帰らぬ息子を待ちながら、妻も重い病にかかってしまう老大工のマリオと、夫がいるオーストラリア行きを夢見る栗売りのマルタ。栗がきっかけで出会ったふたりの過ごす僅かな時間の中で、過去や夢が豊かな音楽とともに浮かんでは消えていく。生と死、出会いと別れ、土地に刻まれた記憶を感じながら、おとぎ話を見たときのようなふんわりとした感覚に包まれた。
text.江口由美
『栗の森のものがたり』(2019年 スロベニア/イタリア 82分)
監督・脚本・編集:グレゴル・ボジッチ
出演:マッシモ・デ・フランコヴィッチ、イヴァナ・ロシュチッチ
配給:クレプスキュール フィルム
元町映画館にて11月18日(土)より2週間上映。
上映スケジュールはコチラ▼
https://www.motoei.com/
©NOSOROGI – TRANSMEDIA PRODUCTION -RTV SLOVENIJA – DFFB 2019
パリの大豪邸で起こった殺人事件。この「犯罪」は誰のもの??
私がやりました
タイトルからはわかりにくいのですが、とってもお洒落な作品です。
1930年代のパリ。新人女優と新人弁護士の若い2人はお金がなく、家賃は滞納、ご馳走も食べられない。でもファッションは手を抜かず、ユーモアを忘れず、どんな時も顔を見合わせ笑っています。一方、男たちはつまらないことにこだわり、不安やイライラを隠すこともしない。あらゆる方向から2人を傷つけますが、知恵と勇気をもって物語は驚きの方向へどんどん展開していきます。
衣装、インテリア、音楽はいうまでもなく、気の利いた会話、テンポ感、皮肉、風刺にこそ、“お洒落”を感じるコメディ。ゴージャスな伝説の大女優が、後半を盛り上げ、決して軽くはないテーマを掲げながらも終始笑って見ていられる。こんなコメディを待っていました!
text.田中奈都子
『私がやりました』(2023年 フランス 103分)
原題:THE CRIME IS MINE
監督 脚本:フランソワ・オゾン
出演:ナディア・テレスキウィッツ、レベッカ・マルデール、イザベル・ユペール
シネ・リーブル神戸にて11月3日(金)公開!。
上映スケジュールはコチラ▼
https://ttcg.jp/cinelibre_kobe/
©2023 MANDARIN & COMPAGNIE – FOZ -GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA – SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION