5月号
木のすまいプロジェクト|平尾工務店|襖編|Vol.1
失われつつある日本伝統の建築文化を未来へ。
連綿と受け継がれてきた匠たちの仕事をご紹介します。
襖の歴史
今回から襖がテーマです。
襖とはご存じのように、木製の骨組みに紙や布などを張った室内用の引戸のことですが、これは日本で独自に生まれ発展してきた建具です。
柱や瓦のように考古学的発掘で出土することがないためその発祥はよくわかっていませんが、文献上で最初の襖は9世紀後半、宇多天皇の時代に平安京の内裏の中心、紫宸殿の主屋の北に設置されたものです。9か所の柱と柱の間に設置され、そのうち中央の1つが開閉できたとか。左右の8つには太公望や諸葛孔明など古代中国の功臣の肖像が描かれていたため「賢聖障子」とよばれました。
やがて日本最古の絵巻である平安末期の『源氏物語絵巻』や、鎌倉時代の『法然上人絵伝』に描かれていることからも、襖は貴族の屋敷や寺院などに用いられていったようですが、一般化するのは16世紀頃からといわれています。台かんなが改良されて敷居の溝彫りが容易になり引戸が発展、骨組みの加工も効率化され襖自体も作りやすくなり、襖工の各工程で専門の職人も出てきたようす。秀吉の時代になると狩野永徳や長谷川等伯らすぐれた絵師たちにより襖絵が華麗をきわめました。
その後襖は規格化され、襖絵から絵柄のある唐紙張りになるなどの工夫でリーズナブルになって、江戸時代には商家などから庶民へ普及していきます。
高度経済成長期以降は壁とドアの部屋が増えて存在感が薄れていきましたが、近年は空間の自由度を高める襖や引戸の良さが見直されているようです。
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