10月号
元町映画館 vol.10|香港人の アイデンティティーを 見つめて
Blue Island 憂鬱之島
ロシアによるウクライナ侵攻から半年以上経ち、全国のミニシアターではウクライナに関連する作品の上映が続いているが、香港問題も忘れてはいけない。一国二制度のもとで保証されてきた高度な自由、民主主義を守るために学生や市民が立ち上がった2014年の雨傘運動の最中に身を置き、カメラを回し続けたドキュメンタリー『乱世備忘 僕らの雨傘運動』のチャン・ジーウン監督最新作は、自由を希求する者を受け入れ、闘い続ける香港の歴史を後世まで伝える決意が見える。
本作では、文化大革命、六七暴動、天安門事件の当事者の今に迫るだけでなく、再現ドラマの登場人物として、2019年の民主化デモに参加した若者たちと共演。自由を求めた先にある現実に目を向けながら、香港人のアイデンティティーを見つめるのだ。出演時、有罪判決を受ける可能性のあった青年は、六七暴動時に刑務所生活を送った男性と刑務所の独房で静かに語り合い、文化大革命時に自由を求めて香港まで泳いで渡った老人は、今でも日々、海で泳ぐ。世代を超えた香港人たちの対話やその姿からわたしたちも共に学び、考えたい。(江口由美)
『Blue Island 憂鬱之島』
(2022年 香港=日本 97分)
監督・編集:チャン・ジーウン
出演:チャン・ハックジー、アンソン・シェム、
シウイェン、ラム・イウキョン、
フォン・チョンイン、セッ・チョンイェン、
ヨン・ヒョンキッ、タム・クァイロン
配給:太秦
元町映画館にて10月22日(土)より2週間上映。
<その他の注目作>
10月1日から、6月にご紹介した『ドンバス』のセルゲイ・ロズニツァ監督が、第二次世界大戦下のキーウで起きたユダヤ人大量虐殺の始まりからその後をアーカイヴ映像で描く話題作『バビ・ヤール』を上映します。
元町映画館
神戸市中央区元町通4-1-12
66席+1(車椅子)
TEL.078-366-2636
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