2014年
4月号

日本屈指の女子大へ  武庫川女子大学

カテゴリ:教育・スポーツ

武庫川女子大学 学長 糸魚川直祐さん

創立75周年を迎えた武庫川女子大学は近年、ますます評価を上げている。教育方針や、来年度に新設される予定の看護学部などについて、糸魚川学長にお話しいただいた。

学問を究め、資格・就職にも強い

─武庫川女子大学は優秀な女性を社会へ送り出すという意味でも評価を上げていますね。
糸魚川 就職率は高いです。一般企業だけではなく、教員や公務員などの内定率も高い実績があり、公務員では警察官の採用人数が全国の女子大でトップクラスです。
一方で就職のみならず、研究者育成にも力を入れています。大学院生の在籍数は全国の国公私立女子大の大学院の中で3番目、文科省の科学研究費の採択件数も上位です。
─文学部の心理・社会福祉学科では国家試験の実績も非常に高いそうですが、他にも資格取得に強いのでしょうか。
糸魚川 輩出する小学校の教員数も全国の女子大の中でもトップですし、食物栄養学科では数多くの管理栄養士を育てています。本学のキャッチフレーズは「学問を究め、女性の未来を拓く~資格と就職に強い大学~」です。資格取得や就職に強いだけが大学ではないのです。大学は本来、勉強するところで、それも中学や高校の勉強と違い本当の意味での真理の探究です。深く学ぶことで結果的に資格や就職に結びつくのであり、資格や就職が第一目的ではありません。
─スポーツや音楽でも有名です。
糸魚川 スポーツではカヌーがダントツの全国一で、卒業生にオリンピック選手もいます。陸上も強くて、女子の棒高跳びの日本チャンピオンは本学の4年生です。タッチフットボールでは日本一を争う決勝戦で社会人チームと引き分けましたが、その相手チームにも本学の卒業生が何人もいました。音楽では音楽学部のレベルは高く、演奏家や音楽の先生を数多く輩出し、応用音楽の分野でも活躍しています。

切磋琢磨する女子教育

─女子大のメリットはどういうところにありますか。
糸魚川 一般的に本学では、女性のみで授業を行っていますが、これには大きな意味があります。おおむね共学校の女子学生は男子学生に遠慮したり目を気にしたりして、いろいろ複雑な状態におかれるわけです。しかし、女子大では女性だけですから、本音で自分の意見が言え、お互い切磋琢磨します。実は厳しい世界で、共学校の女子学生より勉学に打ち込めます。また、女子だけの環境ですと遠慮はいりませんし、お互い大いに助け合いますから、結束力も強いですね。一方でキャンパスの外に一歩出ればそこは男女共同社会で、男性の目があるわけです。そうなると女性としてこういう点を伸ばさなければいけないとか、言うべきことは何かなど、一日の中でメリハリが出てきます。その中で女性の能力を伸ばすことができる、それも大きなメリットです。女子大といっても大学の4年間、短大の2年間、365日女子学生を閉じこめて教育指導を行っているわけではありません。西宮市大学交流センターや広域大学連携事業において他大学の学生と一緒に単位互換の授業を受ける場合は男女共学になりますし、授業以外ではサークル活動などを通じて男子学生との交流もあります。
─各学部とも偏差値が高いのですが、優れた学生をどのようにステップアップさせていますか。
糸魚川 良い教育のためには、良い先生が必要です。教員の採用にあたっては模擬授業をしていただいて総合的に判断しています。現在おられる先生にも、同僚同士で授業を研鑽してもらっています。また、1992年より、授業に関して学生にアンケートをとっています。言わば授業に対して学生がつける通信簿です。先駆的な取り組みだったので、開始時はさまざまな意見がありましたが、授業改善に大いに役立っており、現在も継続中です。
─海外展開にも積極的ですね。
糸魚川 24年前にアメリカのワシントン州スポケーンにある広大な敷地と歴史的建造物を取得しました。そこを分校として現地の先生により語学や国際社会の問題などの教育が行われ、今までに英文学科の学生を中心に1万人以上がそこで学びました。また、近隣でホームステイを行い、地域とも密接につながっています。これだけのプロジェクトを行っている例は全国の大学でも珍しいのではないでしょうか。

進化する武庫川女子大学

─2015年度に看護学部を新設する予定だそうですね。
糸魚川 本学は後発になりますが、質の高い看護師を学部レベルで輩出し、さらに大学院も同時に設けて研究能力の高い看護師を育てたいと考えています。定員は学部1学年80人、大学院修士課程1学年12人を予定し、高いレベルの教育を行います。校舎も現在、建設工事が始まっています。総合大学の強みを発揮して他学部との連携を密にするだけでなく、アメリカの分校も活用して国際看護も視野に入れた展開も目指します。女子大というと一般的に文系というイメージですが、本学は薬学、生活環境、建築などの理系、健康・スポーツ系、音楽の分野に加えて、保健医療の分野にも力を入れます。このように本学は総合性を発揮し、高いレベルの教育・研究を行い、社会の要請に応えていきたいと思います。
また、本学は教員の養成にも力を入れております。今年度中に学校教育センターを設け、教員を目指す学生の総合的な教育と、教師になった卒業生の研修を行うなど、教育活動全般にわたり地域に貢献しようと考えています。
先年、女子大では日本初の建築学科も新設し、昭和の名建築・甲子園会館で授業を行い、学生には好評です。
─卒業生に求められることは時代とともに変化していますか。
糸魚川 グローバル化が進み、ビジネスのノウハウが重要なのかと思うのですが、大学が一番求められるのは昔からの伝統的な学力や教養、つまり考え方の基礎なのです。豊かな教養とは、例えば古典など一番基本的な部分から養われます。また、コミュニケーションも社会での基本ですので、そういう点も身につけてほしいですね。時代に即応したといっても近視眼的な知識ではなく、基礎を学んでほしいのです。
─75周年を迎え、今後どのような大学づくりを目指しますか。
糸魚川 80周年に向けて、グローバルな視点から女子教育の特長と強みの探求、女子研究者の育成、女性が得意とする新分野の開拓、地域や社会への貢献、財政基盤の充実という5つの戦略的テーマを掲げています。これに沿って学生のことを第一に考え、教職員一丸となり主体性・論理性・実行力を培う女子教育に取り組んでいく所存です。

2015年春に新設される看護学部(計画中)。阪神「鳴尾」駅から3分の中央キャンパス内に建設が進む


「第49回全日本学生カヌースプリント選手権大会」の5, 000mシングルで1・2フィニッシュした多田羅英花さん(健康・スポーツ科学科3年)=写真手前=と妹の彩花さん(同2年)


2012年には設立50周年を迎えた薬学部


建築学科は日本の近代建築を代表する甲子園会館(国登録有形文化財)で建築を学ぶ


糸魚川 直祐(いといがわ なおすけ)

武庫川女子大学 学長
1998年武庫川女子大学文学部教授、2001年同大学文学部長、2008年より現職。博士(人間科学)。

武庫川女子大学

中央キャンパス
兵庫県西宮市池開町6-46
TEL.0798-47-1212(代表)
甲子園会館
兵庫県西宮市戸崎町1-13
TEL.0798-67-0079(直通)

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