1月号
新春インタビュー|都心、郊外、里山、農村地域がひとつになって、 新たな神戸のまちづくりが始動|神戸市長 久元 喜造 さん
緊張感を持って取り組んだ12年間
―12年間を振り返っての感想をお聞かせください。
神戸は震災を経験し、大きな災害にも見舞われてきた都市です。今、日本や世界を見回しても大災害が頻発し、大きな事故も起きています。都市行政の最も重要な役割は市民の安全を守ることですから、緊張感を持って取り組んだ12年間、一日が無事に終わるとホッとするという繰り返しだったのが正直なところです。
そんな中で、強く感じたのが神戸の市民力です。震災を乗り越えてきた市民の皆さんの力には大きなものがあり、行政がどう関わっていくのかを模索し続けてきました。それを強く感じたのがコロナ禍の時期です。神戸では市民の皆さんが力を出し合って乗り越えようというたくさんのシーンがありました。例えばワクチン接種では、医師会、民間病院協会、歯科医師会、薬剤師会とともに共同で本部を開設し連携体制を取りながら、神戸ハーバーランドセンタービルに大規模接種会場を置きました。また楽天グループの三木谷浩史会長から直接申し出を頂き、ノエビアスタジアムに全国的にも他には例を見ないほどの大規模な会場を開設することができました。ドクター、薬剤師、大学関係者をはじめ多くの方々の協力、また大学生のボランティアによる「新型コロナワクチン予約お助け隊」の活動もあり、オペレーションが可能になりました。オール神戸でコロナ禍を乗り切ったと言っても過言ではありません。
―12年間の積み重ねが形になって目にもはっきりと見え、変わり始めた神戸を実感しています。
神戸はかなり早い段階から震災復興をしてきましたが、その先にあるまちづくりにはなかなか取り組むことができず、震災がなければできたこと、やらなければいけなかったことが据え置きになっていました。それらに着手でき、動き始めて市民の皆さんの目の前に姿を現してきました。最も分かりやすいのが三ノ宮駅前だと思います。2021年に神戸三宮阪急ビルがオープンし、サンキタ通りがリニューアルしました。今、雲井通5丁目に西日本最大のバスターミナルが入るビルが建ち上がってきています。JR西日本さんの駅前ビルの工事も真っ最中です。市役所本庁舎2号館の建て替え工事も進んでいます。今後2~5年ぐらいで、神戸都心は大きく姿を変えることになります。

神戸市役所本庁舎2号館完成イメージ図 ※パースはイメージであり、今後変更となる場合があります
自助、共助、公助で健やかに日々を送っていただきたい
―直接市民の目に入らないところでも、いろいろ変わり始めているのですか。
見えないところで市民生活を支えることは基礎自治体である神戸にとって大きな役割です。例えば、震災のとき避難所で断水が長く続き、こんなことが二度とあってはならないと1996年から20年の歳月をかけて大容量送水管を整備し、市民が必要とする生活用水12日間分を溜め給水拠点として応急給水が可能になりました。六甲山系の砂防ダム整備や植林事業は、国の直轄事務所や兵庫県、神戸市が協力して実施しており、その効果は近年の水害でも発揮されています。三宮南部エリアでは浸水が度々起きていましたが、3つの雨水ポンプ場と巨大な雨水管を地下に作り、高潮時に雨水が排出できない場合に、ポンプを稼働させて海に流すという仕組みを作りました。また、南海トラフ地震を想定した津波対策としては、遠隔地からの開閉操作や自動閉鎖ができる防潮鉄扉・水門を設置しています。これらの事業は、山の中や沿岸部、地中深くなど、市民の皆さんが気付きにくいところで行われ、市民生活を守っています。

阪神・淡路大震災の教訓を生かし整備された大容量送水管

阪神・淡路大震災の教訓を生かし整備された大容量送水管
―豊かな市民生活のためにどういった取り組みが進められていますか。
誕生して人生の終焉を迎えるまで、それぞれのライフシーンに合わせ、市民皆さん一人一人の自助、助け合う共助、そこに行政による公助をうまく組み合わせて健やかに日々を送っていただくことは非常に大事です。特にシニア期にはいかに健康寿命を延ばすかが重要です。残念ながら老いは避けられず、例えば認知症神戸モデルは、個人市民税均等割の上乗せで負担をいただきみんなで支え合う制度です。子育て支援については2025年版の「共働き子育てしやすい街ランキング」(日本経済新聞社・日経BP)で3年連続関西1位を頂きました。これは、子育て支援に取り組んでこられた皆さんの努力によるものです。感謝するのと同時に、これからも続けていくことが大事だと思っています。
新たな国際都市としての神戸を
―神戸空港の国際化は大きな注目を集めましたね。
矢田立郎前市長をはじめ、多くの方々が大変な苦労をされ、2006年2月、神戸空港は開港しました。私は矢田前市長からいろいろとお話を聞かせていただきながら引き継ぐことになりました。そして神戸空港を関西全体の発展につなげようと国際化を目指し、第2ターミナルが完成し、2025年4月18日に神戸空港は国際空港になりました。これも非常に困難な課題で、長年にわたる関係者の努力が実った結果です。国際化は神戸の第二の開港といってもいいかもしれません。

神戸空港第2ターミナル
―2026年から神戸市が取り組むべき最も大きな課題は?
神戸は国際港湾があり、1874年には神戸・大阪間に初めて鉄道が開通し、神戸駅が東海道本線と山陽本線との結節点になり、道路網が発達し、交通の要衝であることを原動力として発展してきました。今は、高速道路ネットワークがあり、新幹線があり、そして、新たに国際空港を手にしました。これだけの交通インフラがコンパクトな都市に整っている例は全国でも他にはないと思います。そこで神戸市として取り組むべきことは、神戸空港国際化によって手にすることができた可能性を開花させ、これを目に見える形にしていくことです。新たな国際都市としての神戸をどう発展させていくのかは行政だけが考えることではありません。経済界、大学をはじめとするアカデミア、中高生も含めた若い世代の皆さん、それぞれから提案を頂き、みんなで考えて今後の方向性を定め、具体的な施策を結実させていくための基本計画を策定しているところです。今後は、2030年前後の国際定期便就航に向けて、ターミナル整備を進め、空港周辺の土地利用も検討していく予定です。
職住近接のまちづくり
―集い楽しむ場は三宮周辺で整いつつあります。市民の生活の場についてはどう変わっていくのでしょうか。
神戸は人口が減っているのだから都心にタワーマンションをどんどん造って、そこに人口を集めるべきだという意見もあります。しかしこの考え方は、いずれ都心は廃墟となり、放置された郊外も廃墟になる〝滅びの道〟に向かうものだと考えています。
戦前から発達してきた鉄道網と戦後に整備された市営地下鉄などの強みを活かして、郊外の住環境を充実させようとしています。震災後、放置されてきた駅をリニューアルし、駅前を快適で魅力のある空間にしていきます。地下鉄西神・山手線の西神中央駅、名谷駅は概ね完成し、JR垂水駅、神戸電鉄鈴蘭台駅など整備途上の駅もたくさんあります。駅前に公共投資を行うことで民間投資を誘発し、マンションも建ち始めています。さらに都心に人口が集中する〝滅びの道〟へと進まないためには、神戸で働く場所をつくる、それも都心だけでなく郊外にもつくる「職住近接のまちづくり」が非常に重要になってきます。遠距離通勤をすることなく近隣で働き、仕事をしながら子育てをし、ショッピングや飲食も楽しめるような郊外のまちづくりをして、神戸全体を都心と郊外のバランスが取れたまちにしたいと考えています。

地下鉄西神・山手線「なでしこ芸術文化センター」 ※神戸市提供
里山やニュータウンを都心とつなげる
―里山や農村地域も変わるのですか。
すぐ近くにある里山に人の手を入れて維持し、森林を再生し、農村地域の活性化にも着手し、ニュータウンや都心との間に人の往来を盛んにする取り組みを始めています。里山に居住して都心のライフスタイルを楽しむことができる手段として2020年6月、北神急行電鉄を市営化しました。谷上・三宮間の運賃550円が280円に半減、これは日本の鉄道運賃では無かったことです。北神地域と都心が結ばれただけでなく、魅力ある神戸の里山やニュータウンと都心をつなげる第一歩になりました。
神戸は都心、下町、市街地、六甲山、里山、農村地域など多様な顔を持つまちです。その姿を残すのと同時に、それぞれの特性を生かして変化するまちづくりを市民の皆さんと一緒に進めていくことを、2026年の課題の一つとして捉えています。

地下鉄西神・山手線「買物広場(須磨パティオ)」 ※神戸市提供













