12月号

神戸で始まって 神戸で終る 66
特別であり、なんでもない、2025年11月14日 金曜日
今年最後のテーマは、「特別であり、なんでもない、ある1日」という注文です。
朝、目が覚めたのは8時2分です。いつもより少し、寝坊をしてしまいました。昨夜の就寝時間は9時前で、次に目が覚めたのが11時半。しばらくテレビを見て、2回目に目が覚めたのが3時位。起きて猫のおでんにエサをと思ったが、僕と枕を並べて熟睡している様子なので、トイレに行って再び眠る。そして起床が8時2分だから、トータルで10時間以上寝てるということは大谷翔平選手並みだ。
今夕、東京オペラシティコンサートホールで行われるフィリップ・グラス『MISHIMA』のコンサートに行くので、体力がいる。だからよく眠らなきゃと思って昨夜ベッドに入ったが、幾分寝過ぎてなんとなく疲れたようだ。
ベッドの中で朝食をとったあと、テレビで、まもなく大谷がMVPを取るかもしれないとワーワー叫んでいるので、つい見ることになったが、別に今年はMVPを取らなくてもいいと思っていた。が、予想通りに3年連続MVPを獲得した。画面の大谷は、愛犬のデコピンの柄に合わせて茶色のトレーナーと白いパンツ、大谷夫人もやや濃いめの茶色のワンピースで、デコピンの茶色よりやや濃い。きっと同じ色の洋服がみつからなかったんだろうと思う。
大谷のMVPは、まぁよしとして、監督賞は、ドジャースのロバーツ監督には一票も入らなくて見事落選。これも妥当。今年の彼の采配は滅茶苦茶というか、データ主義が露骨に出てしまって、替えなきゃいけない選手を替えないで、替える必要のない選手を替えて、何度も逆転負けを食らってしまった。
その例は、特に山本由伸に関して言える。彼は快調なピッチングを続けており、誰がみても完投できる。本人も「完投したかった」と後で言っていたにもかかわらず、ロバーツはパターン通りに7回だか8回だかで降ろして、あとを繋いだリリーフピッチャーがボコボコに打たれて、結局、逆転負け。こんなふうに山本は、2勝損をしている。この2勝のために山本はサイ・ヤング賞が獲れなかったと考える。ロバーツの責任は大きい。今年、ドジャースが勝った試合は全て選手の活躍で、負けた試合はほぼロバーツの采配ミスで負けている。今年も昨年に続いてワールドシリーズを獲得したために、来期も続投することになるのかもしれないが、今年の監督賞に一票も入らなかったことの反省などはしているのかな。頑固な人のようだから、反省などしないに決まっている。
今年は佐々木朗希をリリーフで使ったが、ロバーツはきっと味をしめて、来年も同じパターンでいきそうだ。佐々木は元は先発投手なんだから、来年は先発で投げさせるべきだと思うが、データ主義のロバーツは、来年もリリーフ投手で投げさせ、最終的には先発に使わないまま佐々木をつぶしかねない。
大リーグが見られないので、この間から大相撲を見るようになった。妻は何も言わないが、大相撲に実は詳しい。僕が興味のある力士は、ウクライナ出身の関脇、安青錦と大の里と豊昇龍の3人。安青錦を、なんとか横綱にしたいと思っているが、その前に大関になる必要がある。大の里も少しずつ貫禄がついてきたが、彼は先輩力士との勝負が多いために、時に気後れすることがある。横綱だから、相手が先輩であろうと、彼の方がエライんだから、もっと堂々とやってもらいたい。
実はこのエッセイは、オンタイムで書いている。現在1時半だけれど、3時に美容院で洗髪をしてもらうことになっている。今夕のフィリップ・グラス『MISHIMA』を観に行くためである。
実は昨日、フィリップ・グラスのパートナーのお姉さんの塚田さんが、たった3日間の滞在のニューヨークから帰ってきて、フィリップ・グラスから僕へのCDとカードのプレゼントを持って遊びにきてくれた。フィリップは、僕の世田谷美術館の「連画の河」展のカタログを1時間かけて感想を述べながら見てくれたそうで、その感想がなかなかユニークなんだけれど、ここで書くと長くなるので、いつか塚田さんに書いてもらうことにしよう。
3時まで、あと1時間20分ほどあるので、さあ、それまで何を書きますかね。
来週掲載される朝日新聞の書評のゲラがあがってきているけれど、掲載が来週のため、その内容を今、書くことはできない。けれど、ややビジュアル的な書評にしたので、書評欄をバッと開けると、いやが応でも目に飛び込んでくるはず。内容がやや暗い本なので、書評もややそれに準じている。
そうしている間に、この間、南天子画廊で個展をした時の中の一点を、ある美術館がぜひ購入したいといってきたそうで、美術館が購入するのは、近年、非常に誇らしいことなので、僕も嬉しい。南天子画廊も喜んでいると思う。

ポスター「ナコイカッツィ」(2003年) 国立国際美術館蔵

フィリップ・グラスより筆者に贈られたCD「Philip Glass Solo」

三島由紀夫生誕100周年記念 フィリップ・グラス『MISHIMA』-オーケストラとバレエの饗宴- パンフレットより
美術家 横尾 忠則
1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞、東京都名誉都民顕彰、日本芸術院会員。著書に小説『ぶるうらんど』(泉鏡花文学賞)、『言葉を離れる』(講談社エッセイ賞)、小説『原郷の森』ほか多数。2023年文化功労者に選ばれる。

撮影:横浪 修
横尾忠則現代美術館では『復活!横尾忠則の髑髏まつり』開催中!












