3月号
ゆっくり動いて、ゆっくり生活習慣に馴染ませるスロー〝ゆっくり〟スタイルのトレーニング
パーソナルトレーナーの先駆け的存在の大川達也さん。日本人のメジャーリーグ挑戦の先駆者・野茂英雄さんから始まり、プロスポーツ選手をサポートしてきた経験と知識を生かして、安全で効率的で効果的な独自のスタイルでトレーニングを実践している。神戸でオープンしたジムを訪ねてお話を伺った。
野茂さんとの出会いが道を開いてくれた
―大川さんがパーソナルトレーニングに注目されたきっかけは?
野球やバスケ、格闘技などいろいろなスポーツを経験してきた私は大学生のとき、スポーツジムには筋肉をつけるだけで科学的なトレーニング指導をする人がいないということに気付きました。私なりにリサーチをするうちに、マイケル・ジョーダンをオン・オフともに全面的サポートをしているトレーナーがいることを知り、スポーツ選手ではないマドンナが来日したときにはトレーナーを同伴していることに驚きました。当時はプロスポーツチームで現役を引退した選手がトレーニングコーチとして存在する程度で、体を鍛えるためのトレーナーがプロの職業として存在するなど考えられない時代でした。「これからはパーソナルトレーニングの時代だ!」と閃きました。
―そこからパーソナルトレーナーの道を開いたのですね。
まず、アメリカで勉強しました。スポーツジムでトレーナーの経験を積みながらプロスポーツ選手を担当し自信を付けましたがパーソナルトレーナーへの道は厳しく、30歳になっても芽が出なければ諦めようと決めていました。ところが28歳のとき、野茂さんとの出会いがありました。そのお陰でこの分野が世間に認識され、私自身もパーソナルトレーナーとして、2千本安打達成の栗山巧選手(埼玉西武ライオンズ)をはじめプロスポーツ界、それだけでなく芸能界からもオファーをいただけるようになりました。
―野茂さんとはそれ以来の長いお付き合いなのですね。
近鉄バファローズの退団すぐ後からですから30年近くになります。1995年、逆境にもめげず大リーグに挑戦する野茂さんとアメリカへ渡りオン・オフ共に二人でトレーニングを続けました。活躍して注目されるようになると新聞やテレビなどマスコミ取材で「野茂のそばでいつもウロウロしている日本人は誰だ?」と私まで注目されるようになり、野茂さんは寡黙ですごいオーラがある選手ですから記者さんたちは近づきがたいのでしょうね、代わりにおしゃべりな私のところへ話を聞きにこられたりして(笑)。
経験を基に安全で効率的で効果的なトレーニング法を実践
―NSPA(National Strength Professionals Association )とは?
1970年代、トレーニングに大きなムーブメントが起き、スロースタイルの原型といえるハイ・インテンシティ・インターバル・トレーニングがアーサー・ジョーンズ博士を中心にした研究者たちによってアメリカで発表されました。ノーチラスマシンを使う関節に優しく短時間で効果的なトレーニング法がアメリカ最大のスポーツイベントといえるスーパーボウルで効果が実証されました。私はこのトレーニングスタイルとアメリカで出会い、日本に持ち帰って指導者を養成していましたが、やはり資格は必要です。そこでアメリカの指導者養成団体NSPAと交渉して日本とアジア圏でのライセンスを取得しました。
―独自のスロー〝ゆっくり〟スタイルに込められた意味は?
一つは、トレーニングとの付き合い方です。張り切って週に2回、3回と通い始めても初めはテンションが上がりますが決して続かず「あの3カ月は何だったんだろう?」というのはよくある話ですね(笑)。週1回のペースでゆっくり1年、2年、3年…と続けていると生活習慣に馴染んできて「トレーニングをしないとなんか気持ちが悪いな」と自然と思えるようになります。
もう一つは動作をゆっくり、安全に。靱帯や腱は一度傷めてしまったら二度と元には戻りません。特に高齢化社会ではきちんと身体を守ってあげられるトレーニングでなくてはいけません。筋肉・筋力を無理なくつけて腰痛やひざ痛、股関節痛などを和らげてあげられるトレーニングには、身体の内部のこと、筋肉や関節に関して正しい知識と豊富な経験が必要です。長年、プロ選手のトレーニングで培ってきた技術を一般の人たちのためのトレーニングに落とし込みたいと考えています。
―筋肉は鍛えれば良いというものではないのですね。
私とプロスポーツ選手のクライアントさんとは長いお付き合いです。例えば野茂さんとは30年近く、栗山さんとはプロ入り2年目から20年以上です。その理由は何かと言うと、ケガをしないからです。栗山選手が2千本安打を達成できた理由もそこにあります。限界に挑戦するような無理なトレーニングはケガのもとです。ところが現状では、見栄えが良くてインパクトの強い筋肉を鍛えてムキムキにするトレーニングに流されがちです。惑わされることなく「何が正しいのか」を判断しなくてはいけません。
―スロースタイルジムを東京青山に続き、神戸にオープンされた理由は?
神戸出身の栗山選手とお付き合いさせていただき、年に何度も神戸に来る機会を持つようになりました。スロースタイルに合う街だなと思います。まだ来たばかりですので私自身が勉強させていただくことがたくさんあると思っています。
―神戸の人たちに伝えたいことは?
スロースタイルジム神戸は小規模ながら高級・重厚なイメージで内装を統一しました。最新のマシンを入れて安全で効率が良く、筋肉・関節に優しいトレーニングを第一に考えています。ぜひ一度体験して、ゆっくり、長くお付き合いいただきたいと思います。
スロースタイルジム神戸
代表 大川 達也さん
1966年8月9日生まれ。株式会社ストロングス代表。‘95年1月に野茂英雄のパーソナルトレーナーに就く。現在、栗山巧(埼玉西武ライオンズ)やNOMOベースボールクラブなど、多数の選手・団体と契約。東京と神戸でパーソナルトレーニングジムの運営。トレーナー育成団体 NSPA-ASIAの代表としてパーソナルトレーナー育成も行っている。
スロースタイルジム神戸
営業時間 7:00~23:00
年中無休
(年に数回、臨時休業あり)
※パーソナルトレーニングは完全予約制
神戸市中央区加納町6丁目3-1
アーバンライフ
神戸三宮ザ・タワー1FD区画
TEL.078-219-3815(担当:木下)
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