12月号
竹中大工道具館 邂逅―時空を超えて|第三回|
千年の釘に挑む ―白鷹幸伯(しらたかゆきのり)の和釘
和釘とは鍛冶職人が1本1本たたいて作った昔ながらの釘のことです。あまり聞きなじみがありませんが、実は数年前まで神戸市の小学5年生が使う国語の教科書に取り上げられていました。四国の鍛冶職人・白鷹幸伯(しらたかゆきのり)氏が薬師寺西塔再建にあたり古代の和釘を再現する過程と、千年もつ釘づくりに挑む職人の心意気を描いた「千年の釘にいどむ」という文章です。
薬師寺西塔を1300年前の様式で再建した宮大工西岡常一(にしおかつねかず)棟梁と親交のあった白鷹氏は、この西塔再建に必要な和釘約7千本の注文を受けます。「自分たちはこれから千年以上もつような建物を建てるから、そこに使う釘もちゃんと千年以上もつように作ってくださいね」と頼まれたそうです。機械で大量生産される現代の釘(洋釘)では50年もしたら空気にふれたところから錆びてだめになってしまいます。ではどうするか。白鷹氏は現代の鉄と古代の鉄、そして古代の釘と現代の釘の違いを調べることから始めました。そして、和釘の材料やかたさ、作り方、形などを解き明し、千年もつ和釘づくりに挑戦したのです。納得のいく釘が完成するまで何本も何本も。千年前の鍛冶職人にも千年先の鍛冶職人にも負けたくないという職人の意地。そんな鍛冶屋としてのプライドが、これまでに約4万本もの和釘を打たせ続けたのです。
なお当館ではそんな白鷹氏に、「道具と手仕事」コーナーの奥にある和釘とハンズオン展示「和釘と洋釘をくらべてみよう」だけでなく、「歴史の旅へ」コーナーのいくつかの復元品も製作いただいています。
(学芸員・能見雅子)
竹中大工道具館
TAKENAKA CARPENTRY TOOLS MUSEUM
神戸市中央区熊内町7-5-1
Tel.078-242-0216
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
開館時間:9:30~16:30
(入館は16:00まで)
https://www.dougukan.jp/