4月号
KOBECCO 2012
話し合って、わかり合ってできる「売れるデザイン」
小早川 輝圭
PLUMEデザインワークス(カメラマン、デザイナー)
ショップのポスターやポイントカードなどの、フライヤーデザイン、ロゴデザイン等をてがける。お店は大手スーパーのフードコートや、全国チェーン店から、三宮の小さなお店まで大小さまざま。デザインするときは「そのお店のコンセプトをいかにデザインで伝えるかが勝負」と、店長や担当者と念入りに打ち合わせを行い、お店の立地や歩いている人々などもよく観察する。料理写真、商品写真の撮影やコピーなども自身で担当するので、よりきめ細やかに、ダイレクトにバランス良くデザイン化することができる。営業も、打ち合わせも、デザインも、つまりはすべて「自分でやる」から可能なこと。昨年、新商品「クッキーシュー」を売り出そうとしていた東京の老舗菓子店「柴又コシジ洋菓子店」とは、一緒になってコンセプトを創り上げ、オリジナルキャラクターを使った商品デザインを生み出した。「作った広告によって、売り上げが上がったと言われるのがやっぱり一番嬉しいですね」。
高校卒業後に、海外から仕入れた古着を扱うネットショップを立ち上げて以来、一人で“商売”をしてきた。ホームページ作り、商品撮影のしかたを勉強するうちに写真にはまり、19歳から現像所で働き始める。フリーカメラマンとして有名旅行誌やフリーペーパーなどの雑誌の撮影経験も多数ある。
一方、仕事の合間には、イラストや、Tシャツデザインで自分自身を表現。ROCKなオリジナルTシャツと、古着を売る小さなショップをトアロードで開いていて、この6畳半ほどのショップがデザイン事務所を兼ねる。Tシャツプリンターを持っているので「悶々としてるデザイナーの子は、作品持ってきてくれればTシャツ作りますよ」と。オリジナルTシャツのデザイン&プリントの注文も受け付けている。ただし打ち合わせが入るとショップはお休み。
■PLUME DESIGN WORKS
「立体的に」奏でる
秋田 紗奈江
ヴィオラ、ヴァイオリン奏者
「ヴィオラの音には“凄み”があると思う。ヴィオラを通して、その作品美しさだけではなく“凄み”を表現できたら、と思います」。ヴァイオリンに比べ、乱暴に言えば地味な存在の弦楽器と思われがちなヴィオラを、そう表現する。
昨年の第21回日本クラシック音楽コンクール弦楽器部門大学女子の部で第3位(トップ)、神戸女学院大学音楽学部で優秀な実技、成績の学生に贈られるハンナ・ギューリック・スエヒロ記念賞を受賞するなど、実力が認められている。大学を今年3月に卒業し、今後はもっと深く学びたいと模索中。
ヴァイオリンは5歳から学び始めたが、中学・高校は神戸女学院の普通科に在籍、高校2年のとき明石フィルハーモニー管弦楽団(通称たこフィル)に入ったのをきっかけに、音楽科進学を決意。ヴァイオリン専攻で入学するも、第二主専攻でヴィオラに出会う。先生から「ヴィオラの演奏が手の内にしっかり入っている」と絶賛され、自分でも「ヴィオラに出会ってから、音色や表現のしかたが自分の中からあふれ出てきた」という。運命的な出会いがそこにあったのだ。
反面、映画館やクラシックライブハウス等のバイトに精を出していて土日はほとんど練習しなかったという異質な音楽学生。「音楽家だからって世間知らずにはなりたくない、普通の社会人として受け答えできるように、人間の心の機微などがわかるような演奏者になりたい」と。その代わり試験前やコンサート前は朝から晩までずっと練習。「その曲で作曲者が意図したことに誠実に、演奏すること。自分が気持ち良いのではなく、作曲家と同じ思考をたどっていくように演奏すること」を大切にしている。
「3Dな感じを表現したい」とも。「楽譜は2Dの世界、でも演奏のしかたによって、どんどん立体感のある音が生まれてくるんです」。彼女の力強い演奏は、確かにずしんとした「音の存在」が感じられた。
4月19日(木)2012年度 神戸女学院大学音楽学部 新人演奏会
5月3日(木・祝)第82回読売新人演奏会