2026年
4月号

エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal) 『汗が目に入っただけ』|俳優 鈴木 保奈美さん 脚本家・演出家 冨坂 友さんインタビュー

カテゴリ:文化・芸術・音楽

鈴木保奈美×冨坂友が贈る
幽霊になった母と家族をめぐるシチュエーションコメディ

舞台、ドラマと共演作のヒットが続く鈴木保奈美さんと冨坂友さんが、舞台で再びタッグを組みます。最新作は“お葬式”コメディ。
保奈美さんが舞台に立つ理由とは?冨坂さんが目論む新たなコメディの形とは?“エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)”とは?おふたりにうかがいました。

―今作は保奈美さんが幽霊に扮するコメディですね。お葬式は笑いとは正反対にあると思うのですが…。
冨坂 コメディは置かれている状況をわかりやすくしておかないと笑えないので、僕は誰もが経験したことがあるシチュエーションを選んでいます。
今回はストーリーに別の“エクストリーム”な状況をプラスするという、新しいチャレンジもあるので、想像しやすい“お葬式”を選びました。
鈴木 実はお葬式が舞台のコメディって意外とあるんですよね。伊丹十三監督の映画『お葬式』は皆さんもご存知だと思います。笑ってはいけないところで、人の欲や本音や隠し事が見えてきてしまって、側から見ると笑えてしまう。どこの家庭でも“あるよね〜”といえる、入りやすい設定です。

―主人公は冨坂さんのお母様がモデルとのことですが。
鈴木 責任重大だなと思いました。作家さんがご自分の家族を描くのは、伝家の宝刀を抜くような非常に重いことだと思っているので。
冨坂さんはこれまで、ホームドラマのような、いわゆる“人情もの”を書いていません。また新しい面を見せてもらえる!それだけでもワクワクするのに、そこに参加できる!責任を感じつつも幸せを感じています。

―保奈美さんとコメディを作りたいと思った理由は?
冨坂 まずは “コメディをやらなさそうな人”というイメージ。保奈美さんがいるだけで意外性があっておもしろい。でも僕は、振り幅のあるコメディもできる方だということはわかっていたので、そういう面をもっと知らせたいという気持ちがあります。
前作『逃奔政走(とうほんせいそう)ー嘘つきは政治家の始まり?ー』(24年)の県知事役では、保奈美さんの機転で良くなったシーンもありました。今回はもっとアクティブ寄りの引き出しも開けていただきます。
鈴木 私、実はおもしろいことを“やりたがり”です。楽しいことは好きですから。そんな芝居ができているかは別として…。
目の前にいるお客さんの気持ちがほぐれていく空気とか温度を感じて、それが笑い声になって聞こえてくる。これがコメディの醍醐味。そして舞台は毎日変わる。そこも魅力です。

―舞台のお仕事が続いていますね。
鈴木 舞台を観るのが好きだから。それとどんな仕事もそうなのですが、「この人と仕事がしたい」という自分の気持ちを大事にしています。脚本家だったり、出演者だったり…。一緒に仕事したいと思う人が舞台にいた、ということが理由かもしれません。
どんなアプローチをもって書いたのか、どんなアプローチを受けて演じているのか。そんなふうに人の仕事を見るのが好きなんです。冨坂さんの舞台を見た時もそうでした。“一緒にやりたいな”と思いました。
生きていくのに大変なことは誰にでもあるし、辛いニュースも目にします。せめて劇場では「悪いことばかりじゃないな」と笑ってほしいし、1番に、自分が笑いたいんです。

―舞台、ドラマと2人のタッグが続きます。冨坂さんの魅力とは?
鈴木 理路整然とした屁理屈の感覚が好きです。
理論は通っているのになぜかおかしい場面とか、あまり考えずに流してしまっていること。雰囲気だけでほわっと話したり、「ああそうだね」って何も考えずに答えたり…。そんなところに「ちょっと待って!」って言いたい感覚が同じなんです。
冨坂 日常で起きる、わざわざ掘り下げなくていいところを掘り下げたくなる。ひねくれた目線の作風を“屁理屈コメディ”と名付けています(笑)
鈴木 世の中にはおもしろい芝居をしている人がたくさんいるんですよね。
私は映像の仕事が多くて舞台の経験があまりなかったのですが、舞台を学びたいと思った時、学べる場所がなかったんです。
そこで、まわりにいる方に「私に教えてくれませんか」とお願いして、勉強会というか、部活みたいな時間を作りました。雑談から始まって、お芝居の話をしたり、脚本を読む機会をいただいたり。冨坂さんにはそんなところでもお世話になっています。

―仕事のほかに部活動…。
鈴木 観てくれる人に「鈴木、まだまだいけるな」と思ってほしいし、自分でも「私、まだまだいけるぞ」と思いたいんですよ(笑)。それにこの仕事は、付け焼き刃ではどうにもならないですから。
特に「笑わせる」って、学べるものでもない気がします。人物像を考える上で勉強になるはずと思って落語を聞くんですが…。笑いはセンスですねぇ。春風亭一之輔さんの高座に行くともう本当におもしろくて。かけらでも、もらえたらいいのにって思うんです。

―今作について保奈美さんには構想の段階から話していたそうですが、保奈美さんから希望はありましたか?
冨坂 希望を直接言葉でいただくことはありませんでしたが、プレッシャーとして僕が勝手に受け取っていることがありました。
3人の子どもがいる母親である点は、主人公の由美子と保奈美さんで共通しています。子どもがいるってどういうことかを考えて、母親である由美子に、ちゃんと体重を乗せて書いてほしいと思っている気がしていました。
家族ものを真正面から書くのだから、どうしたらウケるかという小手先の仕事じゃいけないと肝に銘じています。
鈴木 そういう部分って、お稽古が始まってから味付けしていくところでもあるかもしれない。プレッシャーは私の方があると思います。

―ところで、『あの本、読みました?』(テレ東・BS)は、保奈美さんの“好き”が番組になっていますね。
鈴木 そもそも本を読むことは宿題ではないので、好きな本を読んでいいと思いますが、私も番組を通して出会った本がたくさんあります。なかには「難しそう」と思って避けていた本も…。私と同じように読書の幅が広がった方がいらしたらうれしいですね。
それから、何を読もうかなと思っている方にとっては、少しは手助けになると思っています。

―作家だけではなく書店員、編集者もゲストに招いてます。
鈴木 私は周辺の人の声を聞くのが好きです。装丁家さん、校閲者さんもおもしろかったですよ。本に関わる方は皆さん本が好きで、皆さん一家言持っていらっしゃる。そこが聞きたかった。
元々は読書会に興味があって、同じ本を読んだ者同士が「あーだよね」「こーだよね」と自由に話す機会があったら楽しいだろうなと思っていたんです。読んでいて何かを感じたり、読んだ後に自分であれこれ考えるのが、私の読書の楽しみ方でもあるので。
書いた本人にお話しいただくのは、それって正解なので、答えを聞いちゃうのはズルい気もするけど(笑)。けれどとっても贅沢な楽しみ方とも言えますね。

―最後にこれを聞かないと。
『エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)』とは、どんなお芝居なのでしょう?

冨坂 わからないですよね(笑)
シチュエーションコメディとは、一つの場所で起こる喜劇で、会話中心の芝居です。今回は芝居を上演しながら、同時に別の働きかけが発生する舞台に挑戦します。演劇を観ながらスポーツを観るような感覚です。後半はスポーツを応援する気分で参加してください。
…わからないですよね(笑)
鈴木 ぜひ劇場で「目撃」してください(笑)

鈴木 保奈美(すずき ほなみ)

1966年生まれ、東京都出身。
1986年デビュー以降、数々のドラマに出演。『東京ラブストーリー』(91.CX)で大ブレイクを果たした。『家族ゲーム』(13・CX)で第23回TV LIFE年間ドラマ大賞2013助演女優賞、第17回日刊スポーツ・ドラマグランプリ・春ドラマ助演女優賞を受賞。BSテレ東にて、読書エンターテインメント『あの本、読みました?』にレギュラー出演中。近年の出演作に、【舞台】『逃奔政走-噓つきは政治家の始まり?-』(24)、『レイディマクベス』(23)、【映画】『ミステリと言う勿れ』(23)、【ドラマ】『人事の人見』(25・CX)、『プライベートバンカー』(25・EX)、『生ドラ!東京は24時 -Starting Over-』(24・CX)など。

冨坂 友(とみさ かゆう)

1985年生まれ、千葉県出身。
高校卒業後、オリジナルのシチュエーションコメディを創作するためにアガリスクエンターテイメントを結成し地元の公民館で演劇を開始。その後、東京の小劇場に拠点を移す。代表作『ナイゲン』は全国の演劇部や劇場のプロデュース公演として、『SHINE SHOW!』はシアタークリエ公演として上演。2022年『生ドラ!東京は24時-シンガロング!-』(CX)でギャラクシー賞奨励賞を受賞。2025年には『人事の人見』(CX)にて地上波連ドラのメインライターを務める。

■公演情報
エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)
『汗が目に入っただけ』

〈大阪公演〉
日時:2026年5月2日(土) 13:00/17:00 5月3日(日) 12:00/16:00
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
脚本・演出:冨坂友
出演:鈴木保奈美 
足立梨花 小越勇輝
西野創人 蘭寿とむ 田中要次 ほか
詳細はコチラ

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