1月号

建築構造 インサイト|Chapter 3 浄土寺浄土堂(国宝)
浄土寺浄土堂(国宝)
「どう建てるのか?」を追求する平尾工務店にとって、構造は大きなテーマです。おなじみの建物から世界的名建築までさまざまな建築物について、「構造」という視点を交えながら一緒に学んでいきましょう。
平尾工務店本社からほど近い小野市の浄土寺は、鎌倉時代初期の1194年に創建された寺院ですが、その伽藍に佇む浄土堂は国宝に指定されている名建築。正方形で屋根は宝形造(四角錐状)というどこにでもあるようなお堂にも見えますが、実は日本の建築史を語る上で不可欠な建築物なんです。
浄土堂はこの寺院の開基で、1180年に平重衡により焼かれた東大寺大仏殿の復興を担う東大寺大勧進職を務めた俊乗房重源によって建てられました。現存する唯一の大仏様の仏堂建築で、1194年に上棟し1197年に完成しています。大仏様とは宋の技術をベースにした建築様式で、そのルーツは福建省近辺の建物にありますが、重源は大陸に3度ほど渡航した経験があり、その際に技術を会得したようです。
構造上の特色は枚挙に暇がありませんが、それまでの和様建築との大きな違いは貫があることです。貫とは柱と柱を繋ぐ水平方向の部材で、これにより躯体の強度を高めています。また、3重に架けた虹梁には丸い断面の木材を用い、その上に束を載せることで柱を省略。柱は1辺に4本しかなく、柱間は20尺≒6mという当時としては常識破りのサイズです。これらのことで木材、ことに大木の使用を必要最小限にとどめていますが、その背景には1185年に畿内で発生した大地震によって多くの建物が倒壊し、その復興需要による材木不足があったと推察されます。
内部もユニークです。仏像が安置される須弥壇は正面奥にあるのが一般的ですが、浄土堂では建物の中央、天井が最も高い位置に設置されています。ここに高さ5m以上もある快慶作の阿弥陀三尊像がダイナミックに聳え立ち、参詣者はその周囲を回って、この素晴らしい仏像を360度どの方向からでも拝むことができます。しかも夕方に正面から仰ぐと、夕陽の光が床~天井と反射して阿弥陀様のご尊顔を紅に染めるとともに、足もとをやんわりと霞ませる視覚効果によって浮かび上がるように見え、そのお姿はまさにご来迎そのものです。
天井板は貼らずに、現代の洒落たお店などでよく見られるいわゆるスケルトン天井になっており、挿肘木を基礎とした組物がよく見えて、その造形美と鮮やかな朱色に目を奪われます。
大仏様はその名の通り、二代目の東大寺大仏殿にも採用され、世界最大級の木造建築物である三代目大仏殿より幅が35mほど広い壮麗な建築だったとか。東大寺南大門も大仏様で、浄土堂と同じ基本構造でありながら、高さ25mと桁違いのスケールです。いずれも重源が手がけています。

小野市にある浄土寺浄土堂













