2025年
6月号
6月号

芦屋公園内にある「ぬえ塚」(浜芦屋町5)
神戸のカクシボタン 第138回 地元にまつわる妖怪・UMA・生物の謎を探る!!『ひょうご五国の怪物たち 摂津・鵺(ぬえ)』

「悪霊島、鵺の鳴く夜は恐ろしい」。1981年に公開された横溝正史の推理小説が映画化された際のキャッチコピーだ。ブラウン管から流れるフレーズに怯えつつ「鵺ってなんやねん?」と子供心に思った。本編では、その鳴き声が物語の重要な鍵を握っておりCMにあるホラー的な要素はなかった。鵺とは、頭が猿、胴が狸、手足が虎、尾が蛇といった異なる獣のパーツを持つ妖怪で鳴き声を聞くと凶事に遭遇すると伝わる。実際には夜更けから明け方にかけて鳴くトラツグミ(鳥)が声の正体だと言われている。そんな能の演目にもなる「鵺」にまつわるスポットが芦屋市にある。今から約800年前の平安後期、源頼政は二条院に招かれ深夜になると宮殿を騒がしていた鵺を射落とした。その亡骸を丸木舟に乗せ桂川に流したところ芦屋の浜辺に漂着。人々は恐れおののき墓を作ったという。尚、この伝説は『摂陽群談』や『摂津名所図会』などの史料にも記されている。(大阪市都島区にも同様の伝承・塚が存在)。現在、後世に建てられた塚は川のほとりにひっそりと佇み、地元のみならず遠方からも観光客が訪れている。人々を困らす厄介者を葬り、祀り続ける芦屋人の優しさに触れることができるスポットである。


芦屋公園内にある「ぬえ塚」(浜芦屋町5)


岡力(おか りき)
放送作家・コラムニスト・イラストレーター、ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆、番組を企画。日本放送作家協会関西支部事務局長・大阪芸術大学短期大学部客員教授、心斎橋大学・神戸電子専門学校講師。












