4月号

近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライトを学ぶ|Chapter 11 大谷石 |平尾工務店
平尾工務店がお届けする「オーガニックハウス」の基本的な理念や意匠を編み出した世界的建築家、フランク・ロイド・ライトについて、キーワードごとに綴っていきます。
前回ご紹介した帝国ホテル2代目本館の個性を際立たせている素材、大谷石は、栃木県の県都、宇都宮市の大谷地区(建設当時は河内郡城山村)を中心に産出される岩石です。火山が噴出した火山灰が海底に堆積・凝固してできた流紋岩質の凝灰岩ですが、海なし県から出てくるのが面白いところですね。
凝灰岩の産地は全国にありますが、大谷石の採掘は世界的にも大規模なもので、一説によればフランク・ロイド・ライトが素材に選んだ理由がこの点にもあるとか。周囲の環境と溶け込む有機的建築を標榜するライトは、日本では日本の素材を用いようと全国の石材を比較検討、最初に島根県産の蜂の巣石に着眼します。しかし産出量が少ないため断念し、似たような岩質で十分な量を確保できる大谷石に白羽の矢が。そして短期間に大量の石材を確保するため、帝国ホテルでは石の山をまるごと購入して対応しました。余談ですが、タイルも同様の理由で愛知県の常滑に直営工場を設けます。そして竣工後に帝国ホテルから譲渡され伊奈製陶所となり、これが現在のINAXのルーツだとか。私たちが普段お世話になっているトイレも、実はライトと繋がっているのです。
やわらかく加工しやすい大谷石は、高い技術を持つ日本人の石匠たちにより多彩な彫刻が施されます。もちろんそのデザインはライトによるもので、一定の秩序により統一感を演出しながら、青みがかった白の色合いや素朴な質感も生かして、さまざまな場所の装飾に使用されました。中でも玄関ホールの柱の大谷石には金彩が施され、陽光が差すと燦めきつつ、床に幾何学模様の影を落として幻想的なムードを醸したそうです。
ところで民藝運動の提唱者、柳宗悦も大谷石に惚れ込み、大谷石屋根の長屋門を宇都宮から移築し終の棲家としたほどです(現在の日本民藝館西館)。アーツ・アンド・クラフツ運動と縁があるライトと柳がともに大谷石に魅せられたというのも、どこか興味深いですね。

帝国ホテル2代目本館バンケットにあった、孔雀をモチーフにした大谷石の装飾(イメージ)
イラスト/米田 明夫

FRANK LLOYD WRIGHT
フランク・ロイド・ライト
1867年にアメリカで生まれたフランク・ロイド・ライトは、91歳で亡くなるまでの約70年間、精力的に数々の建築を手がけてきました。日本における彼の作品としては、帝国ホテルやヨドコウ迎賓館、自由学園明日館が有名です。彼が設計した住宅のすばらしさは、建築後100年経っても人が住み続けていることからわかります。
これは、彼が生涯をかけて唱え続けてきた「有機的建築」が、長年を経ても色褪せないことの証明でしょう。フランク・ロイド・ライトが提唱する「有機的建築」は、無機質になりがちな現代において、より人間的な豊かさを提供してくれる建築思想なのです。