3月号

特集 株式会社ビオソフィア|世界中の旅人を、食を、灘五郷で繋ぐ「食楽酒」ツーリズム
株式会社ビオソフィア 代表取締役
常深 大輔さん
神戸の「日常の魅力」を世界に向けて発信
必要なのは面白い〝居場所〟
今回のツアーの実現に向けて、尽力いただいたのが、「カセント」「灘五郷酒所」の企画・設計を担当した建築家で甘空の代表である常深大輔さん。ツアーを通しての感想や神戸が外国人に選ばれるために何が必要か伺った。
その場所が持っているポテンシャルを活かす
建築の仕事を長くやっていて思うことは、何を作るか?といえば、まず「居場所」を作ること。それは単に綺麗にデザインされたものではなく、その場所が持っているポテンシャルと人が混ざり合うような場所です。今、日本中に綺麗にデザインされた店舗はたくさんあります。でも人が集まらないところも多い。なぜかというと同じようなものばかりで、自分たちが楽しめる場所にはなっていない。そんな空中に浮いているような綺麗な場所ではなく、自分自身も楽しめるような「居場所」を作りたいと思っています。
神道と禅。二刀流の料理
福本シェフとの出会いは、私の人生の後半を変えました。日本人は自然というものを、神道という皮膚感覚で理解し、仏教という方法で具体的な生活に落とし込んでいます。そしてユングの言う「集合的無意識」に到達するための手段である「禅」が神道と仏教の橋渡しをしており、これを最も具現化しているのが福本シェフだと思います。今後、日本の料理の世界に対する影響力は大きくなると思いますが、神道と仏教の両立こそがその原動力だと思います。その土地から湧き出る水や素材、八百万の神としてそれらが福本シェフの禅的な無意識の中で生まれる料理はまさにARTそのものではないでしょうか。
ココは何だ?楽しい居場所だ
綺麗にデザインされた場所は日本中にあります。でも楽しくないでしょう?今まで、たくさんの酒蔵を回っていましたので、最初ここを見た時に神社に見えました。麹菌を神と見立て酒造りのタンクの奥に御神体である大きな鏡を立てました。その前でみんなが酒を酌み交わし、五穀豊穣、子孫繁栄を祝う姿の再現が、ここにはふさわしいと考えました。その様子を世界に向けて発信すればきっと海外からもこの場所に人が集まると思います。そのための設えが50メートルのカウンターと入り口のネオン管です。天井に設置されたバナーはアーティストの松本尚さんに26枚、全て手書きで書いていただきました。これは本当に素晴らしいもので「八百万の神と日本人」を表現しています。
神戸のまちはコスモポリタン
神戸は明治期の雑居地指定とその後の戦争や革命で日本にたくさんの外国人が渡ってきたという歴史があります。神戸では中近東、インド、台湾、中国などの多国籍、まさにコスモポリタンな生活、そしてさまざまな料理が日常的に楽しめ、何よりも共存しています。これは強い街のリテラシーであり、このような神戸の「日常の魅力」を世界に向けて発信するメディアを、これから作りたいと思っています。

株式会社ビオソフィア 代表取締役 常深 大輔さん