2025年
1月号
創建時の建物は弘安8年(1285)に焼失、現在の本堂は鎌倉時代に再建された

美しきかな ひょうごの文化財 | 神戸市内 唯一の国宝建造物 |
第一回 太山寺本堂

カテゴリ:おすすめスポット, 文化・芸術・音楽

神戸市西区ののどかな田園風景の中、緑の山並みを背景に佇む天台宗の寺「太山寺」。藤原鎌足の長男・定恵和尚が開山し、孫の宇合が霊亀2年(716)に建立したと伝えられている。「両界曼荼羅」「平家納経」など国の重要文化財に指定された多くの絵画や書物、鎧を所蔵し(各地の博物館に寄託)、ご本尊「薬師如来」を安置する「本堂」は市内唯一の国宝建造物。弘安8年(1285)、火災によって焼失したが、直ちに復興に取り掛かり、永仁年間(1293〜99)に再建された。規模は柱真々間で正面20・82メートル、側面17・76メートルと非常に大きく、その堂々とした姿に圧倒される。
建物は蔀(しとみ)を多用するなど日本独自の寺社建築様式「和様」を基調とする一方で、大陸由来の「禅宗様」が頭貫の木鼻に取り入れられるなど二つの様式が混在している。組物の肘木においても、建物の東半分は木口を一部直線的に構成した和様だが、西半分には全体的に曲線で構成した禅宗様が採用されている。
仏教の大衆化に伴う新しい仏殿形式が成立した初期の例であり、極めて重要な遺構として昭和30年(1955)、国宝に指定された。その後、54カ月におよぶ改修工事で一部変更が加えられ、昭和39年(1964)春完成。銅板葺丹塗の美観を呈し、現在に至っている。
文化環境保存地域内に位置する太山寺は、広い敷地内が散策スポットとしても市民に親しまれている。ぜひ訪ねてみたい『ひょうごの文化財』の一つだ。

組物の肘木は日本独自の寺社建築様式「和様」と大陸から伝わった「禅宗様」が混在している

幾多の戦乱や時勢の波にもまれながら1300年の法燈を守り続けている

創建時の建物は弘安8年(1285)に焼失、現在の本堂は鎌倉時代に再建された

太山寺

神戸市西区伊川谷前開224
TEL.078-976-6658
拝観 8:30~17:00(12~2月は16:30まで)
拝観料 300円

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