10月号
今月の映画
自分を解放し道を開いた
シラク大統領夫人の華麗なる復讐
『ベルナデット 最強のファーストレディ』
スクリーンに登場するカトリーヌ・ドヌーヴを待つファンは、デビューから60数年、世界中で増え続けているだろう。いくつになっても主演作品を用意する映画界も、それに応えどんな役柄でも魅力的に演じる俳優も、どちらもすばらしい。今回は、彼女だからこそ!といえる、実在のファーストレディ・ベルナデットを演じた。実際にベルナデットと親しかったカール・ラガーフェルドの衣装を着こなし、それはそれはかっこいい!
ベルナデットは、夫と同じように教養をもちながらも、自らは影となり支え続け、1995年、夫・シラクは大統領に就任する。が、その途端、彼女は用済み、仕事は与えられず、敬意もなかった。大半が実話という男尊女卑の仕打ちに腹が立つが、彼女は復讐を決意、仕事も人気も得ることになる。大統領が嫉妬するほどに。
監督がこの物語をコメディにしたのは、「メッセージを伝えたい時こそユーモアが大事」とベルナデットに学んだから。肝に銘じよう、復讐は笑顔で。
監督:レア・ドムナック
脚本:レア・ドムナック、クレマンス・ダルジャン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、 ドゥニ・ポダリデス、
ミシェル・ヴュイエルモーズ
原題:Bernadette
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
©2023 Karé Productions – France 3 Cinéma – Marvelous Productions – Umedia
2024年11月8日(金)全国ロードショー
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悪が蔓延る時代に正義を描いた
滝沢馬琴が遺したかったこと
『南総里見八犬伝』から着想を得た作品は驚くほど多い。漫画、映画、舞台、歌舞伎…。江戸時代に書かれた物語に、クリエイターはなぜこんなにも惹かれるのか。今作を観ることで、早く楽しく理解できると思う。原作は、106冊の長編を「虚」と「実」の世界に書き分けながら創作した、山田風太郎の小説。
馬琴を演じるのは役所広司。しかめっ面の堅物が語るファンタジーに目を細め、下絵を描くことで創作の力となる絵師・北斎に内野聖陽。物語を紡ぐ2人のやりとりが軸となり「実」の物語は進む。一方、剣士8人が、悪者退治に向かう八犬伝は「虚」の世界として描かれる。
失明しても創作を諦めなかった馬琴だが、一度だけ筆を止めている。『東海道四谷怪談』の作者・南北との議論後のことだ。正解のないテーマに生涯向き合った作家の信念は、物語に宿っているのだろう。それを受けたクリエイターがまた世に問うている。
原作:『八犬伝 上・下』 山田風太郎(角川文庫刊)
監督・脚本:曽利文彦
出演:役所広司、内野聖陽、
土屋太鳳、渡邊圭祐、寺島しのぶ
配給:キノフィルムズ
©2024『八犬伝』FILM PARTNERS.
2024年10月25日(金)全国ロードショー
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text.田中奈都子