10月号
ベトナム元気X躍動するアジア 第10回| ベトナム民族衣装アオザイの魅力
神戸は、一九七三年に全国に先駆けて「ファッション都市宣言」を発表して以来、「ファッション」が都市発展の基礎となっているようです。それは衣料品のみならず、宝飾品やお菓子さらに観光にまで及びます。そこで今回は、ベトナムの伝統的な民族衣装アオザイ(中南部では「アオヤイ」と発音)を紹介し、神戸ファッションとの「コラボ」を期待したいと思います。
文・ 上田義朗
日本社会の「働き方改革」ー
東京一極集中?
本年八月にゼミ卒業生カンさんが働くホーチミン市の高級アオザイ店「ダンハ」を訪問しました。彼は大学を優秀な成績で卒業し、大手製造企業に就職しましたが、東京勤務を最後に退職してベトナムに帰国しました。
私は「せっかく良い会社に就職したのに」と言いましたが、カンさんの理由に納得。「通勤電車の中では朝から疲れた顔の人たちで満員。ここは僕の生活する場所ではないと思いました」。多数の日本人は満員電車が当たり前、また我慢するでしょうが、外国人から見たら異常なストレス。ましてや大学時代の神戸から東京の転勤では生活環境も激変。この度、彼の元気な様子を見て安心しました。
ベトナムの民族衣装アオザイ
アオザイの生地はポリエステルから綿・絹・ビロードなど、その柄もプリントから手描き・刺繍までデザイナーとお店に応じて多彩に変化します。ただし、そのスタイルは不変です。ベトナム語で「アオ」は上着、「ザイ」は長い、アオザイは「長い上着」の意味で、それにセットでズボンを着用。中国服と違って動きやすく機能的です。
アオザイと和服
ベトナム女性にとってアオザイは正装。私の経験では、ビジネス場面で女性社長がアオザイなら男性はジャケットが必要でしょう。もっとも女子高生の制服は白いアオザイ、ホテルやビルの受付、お店の販売員の着用も普通です。
かなり以前に日本の和服を試着したベトナム人女性に感想を聞いたことがあります。「私は竹になったような気分です」。アオザイの柔らかな着心地に対して和服は重ね着をして帯を締める。確かに「竹」という表現は的確でしょう。アオザイに対応するのは浴衣かもしれません。
アオザイ生地の利用法
お店訪問の記念にアオザイ購入と思いましたが、家族のサイズも不明。そこで生地を写真のように自宅で「本棚カバー」として使用中。ベトナム人が多数在住する神戸でアオザイがさらに注目され、カンさんの「橋渡し」の役割を期待したいと思います。
上田義朗(うえだ よしあき)
流通科学大学名誉教授
日本ベトナム経済交流センター副理事長
外国人材雇用適性化推進協会(ASEO)代表理事
合同会社TET代表社員・CEO