8月号
出会いと学びの旅から Vol.08
手を結んだ老人と障がいのある子どもたち
シアトル市の郊外に「ファークレスト・スクール」という州立の知的障がい児の施設があります。私はある日、この施設の広々とした構内を歩いていると数人の高齢者が何人かの子どもたちとおっかけっこをしている姿を目にしました。それはこの施設で働いている「フォスター・グランドペアレント」つまり、里親ならぬ、里祖父母なのでした。
これは低所得層の高齢者を児童福祉施設が雇用し、特定の大人と子どもとの1対1の信頼関係を作り、子どもの健全な成長を図り、合わせて高齢者の経済支援を行うといった趣旨で1965年から始められ、ほぼ全米の各州で実施されているということでした。高齢者がこのプログラムに参加するためには ①60歳以上であること ②一人暮らしなら年収が1600ドル以下(二人の場合は500ドル追加) ③こどもが好きであること ④健康であること、の4つの要件があります。仕事は、定期的に施設を訪問し、家庭でしているように決められた「孫」と自由に遊ぶことです。毎朝自宅からスクールバスで送迎され、1日4時間、1週間に5日間働き、賃金は1時間につき日本円で約500円支払われます。対象となる子どもは16歳以下で情緒不安定のため、大人との安定した個別のふれあいが必要と考えられる子どもたち、とされています。調査によると、大人との定期的で緊密な結びつきが子どもたちの社会的、情緒的、さらには身体的な発達にさえも大きな役割を果たしていると報告されています。高齢者が子どもたちと楽しそうに過ごしている様子を見ると、彼らが仕事として子どもの世話をしているとは思えず、まさに自分の孫と自然に遊んでいるという感じでした。
このプログラムは子どもたちにとってプラスになっているだけでなく、参加している高齢者にもよい効果をもたらしていることです。すなわちこの仕事で収入を得られるだけでなく、障がいのある子どもたちのために働く喜びが彼らの暮らしに潤いを与えていることでした。
愛の手運動は
親に育てられない子どもたちに、
里親・養親を求める運動です。
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