8月号
ベトナム元気X躍動するアジア 第8回| 映画『ベトナムの風に吹かれて』 ―ネット配信の開始
日本ベトナム合作映画『ベトナムの風に吹かれて』(監督・大森一樹、主演・松坂慶子、二〇一五年公開)の「ネット配信」が七月から始まりました。それを機に、製作の裏話をご紹介します。筆者にとって本作品は、初めての映画プロデューサーとしての仕事でした。映画公開後、ベトナム撮影は2回目と言われた俳優の斎藤洋介さん、本誌にも何度か記事が掲載された監督・大森一樹さんが逝去されました。改めてご冥福をお祈りいたします。
文・ 上田義朗
小松みゆきさん・原作者との出会いが出発点
本映画の原作者・小松みゆきさんとは一九九八年にハノイで初めてお会いして以来、ベトナム訪問時に毎度お目にかかっていました。外国の近況と変化を知るには定点観察に似た「定人面談」が効果的です。小松さんの著書『越後のBaちゃんベトナムへ行く』(二〇〇七年、2B企画。改訂版『ベトナムの風に吹かれて』二〇一五年、角川文庫)の出版時、これは映画化できると思いました。
毎日放送ラジオ番組『上田義朗のベトナム元気!』の出演でお世話になった大毎広告・金子俊彦さん(故人)に映画企画を相談すると、日本映画界の重鎮・岡田裕プロデューサーを紹介して頂きました。岡田さんから「エグゼクティブ・プロデューサーをお願いします」と言われて、自分の役割が直ちに理解できなかったのですが、要するに資金調達の仕事。これはビジネス実践で大いに勉強になりました。ビジネスは結局、お金次第です。
オアイン社長と今も続く交流
本映画は、文化庁の二〇一四年度文化芸術振興費補助金(国際共同製作映画支援事業)を受けています。その前提はベトナム側からの出資。その合弁相手ドンドショー社(芸能娯楽会社)オアイン社長を旧知のタム先生(貿易大学)から紹介してもらいました。
この「合弁」交渉は難航。その説得ポイントは、ベトナム側の出資は、主な撮影場所がベトナムですからベトナムで出費される。要するにベトナム側の出資金は環流するので十分に儲かる。これによって交渉成立。ビジネスの醍醐味を実感しました。
オアイン社長とは現在までも交流が続いています。お嬢さんの結婚式に出席したり、ご家族と神戸で食事したりしてきました。プロデューサーとしての彼女は、為替レートの微小な変動にも注意を払っており、仕事の進め方も慎重でした。こういった体験が彼女との信頼が継続する理由です
映画の魅力
高校時代から映画好きでしたが、全国公開の映画製作まで経験させて頂きました。また多数のスタッフの人々の役割に応じた努力の結集があって映画公開に至ることを体験。現在、私はエンドロールを最後までゆっくり見るようになっています。
ネット配信元:https://mikata-ent.com/broadcast/1050/
■上田義朗(うえだ よしあき)
流通科学大学名誉教授
日本ベトナム経済交流センター副理事長
外国人材雇用適性化推進協会(ASEO)代表理事
合同会社TET代表社員・CEO