3月号
デビュー25周年。1周回って原点回帰です。|シンガーソングライター 小林 建樹 さん
神戸市生まれのシンガーソングライター、小林建樹さんにお会いしました。
デビュー25周年を記念し、11枚目のアルバム『Gift』をリリース、2月には東京と神戸にてライブを開催。
小林さんの音楽の始まりと今、これからのこと、伺いました。
Q.神戸市のご出身、現在は東京都在住ですね。
仕事の関係で東京にいますけど、神戸はやっぱりいいですねぇ。
僕は、佐野元春さんや坂本龍一さんに影響を受けて現在の仕事に就くことになったのですが、「海外の曲も聴きたい」っていう気持ちを満たしてくれたのは、三宮にあったレコード店『Mr.Jackets』です。だいぶ通いました。ビートルズとトッド・ラングレンが大好きでした。
Q.邦楽も洋楽も好きだったんですね。
好きになるとアルバム全て聴いて、聴いて、聴いて(笑)。すごく聴きました。
アニメーションの音楽も好きでした。それは子どもの頃からですけど、最初は『赤毛のアン』(1979年)。作曲は三善晃さんでした。あの頃、アニメーションの音楽ってすごく良くて、小林亜星さん、冨田勲さん、一流の作曲家が手がけていたんですよね。そのうち「僕も作曲したい」と思うようになって、ピアノを弾き始めたんです。
Q.作曲家の道を目指し始めたのはいつですか?
高校生の時にはもう曲を作っていて、進む道は決めていました。でも進路相談で担任に話したら、「受験のためのピアノの勉強をしてないから無理」って(笑)。結局ほぼ独学です。
でも自分には独学が合っていたと思います。大好きな坂本龍一さん、三善晃さん、矢代秋雄さんが、フランスの作曲家について学んでいたことを知って、僕もフランスで生まれたクラシック音楽を勉強したり。ドビュッシー、ラヴェル、サティ…。勉強しているうちに、「ブラームスっていいな」って思うようになって、「あ、僕、ドイツの作曲家が好きかも」って、今度はドイツの音楽を知りたくなって。そうしてるうちにバッハも好きになって。
Q.結果、幅広く学ぶことになりましたね。
そう(笑)。言葉がないのに人を感動させるってどういうことなんだ?と思ってたんですよね。インストゥルメンタルのアルバム『何座ですか?』を作ったのは、クラシックを勉強したからこそです。12星座を音で表現してみました。
Q.ご自身でデモテープを送って、デビューに至ったとか。
曲を作り、詞を作り、編曲し、歌う。1人で黙々と続けていたらアルバムができる。できたら聴いてほしいですから。好きなアーティストが所属する事務所とかレコード会社とかに送って返事を待つ。ただただ待ってましたねぇ。SNSで自由に発表できる現在とは大違いですね。
Q.最新のアルバム『Gift』は11枚目になりますね。
なんとなく昭和というか、音楽をすごく聴いていた時代を感じるメロディが生まれました。原点回帰だと思うんです。アルバム丸ごと集中して聴いていた80年代90年代前半あたりまでに感じたことを、現在の感性で曲にしているかもしれない。
Q.最近、いいなと思う音楽は?
街中で流れているJPOPを「いいな」と思うことがあります。Official髭男dismさん、米津玄師さん、King Gnuさん。センスが良くてキラキラしてる。みんな、「この形が好きでやっています」っていう個性が見えて素敵です。
Q.26年目。これからどんな曲を作りましょう。
僕も、僕の音楽を作ろうと思います。何年にもわたっていろんなことを考えていますけど…。 結果、今、音楽に向かう気持ちはこれまでになくシンプルです。
アダストラ・ベーカリーにて(神戸市中央区)
text・田中奈都子
小林建樹
(こばやしたてき)
1972年生まれ。兵庫県神戸市出身。1999年 シンガーソングライターとして、Kittyエンターテインメントよりデビュー。2003年 WindowDiskRecord(WDR)を立ち上げる。同時に楽曲提供、プロデュースも行う。
楽曲提供
嵐『Kagerou』
嵐『シリウス』
嵐『maboroshi』
植村花菜『太陽』
平原綾香『誓い』
(トリノオリンピック
NHKテーマソング)
藤木直人『Hound Dog』
松浦亜弥『灯台』
RAG FAIR『告白』
他