3月号
環境に優しいEVバイクに 神戸牛の〝いのち〟を吹き込む|株式会社ケイテック
「所属、専門分野、通常業務の枠を超えてキャリアアップを目指しませんか?」。
株式会社ケイテック(※①)管理部から届いた社内副業制度に関するお知らせメール。
興味を持った3人の若手社員が手を挙げた。
通常業務では航空エンジンの3D設計支援や解析をする鶴田さんと村上さん、オートバイの3Dモデリング担当の漆垣さん。「普段はずっとパソコンと向き合っているので、人とコミュニケーションを取りながら仕事をやってみたいという思いがありました」とそろって応募の動機を話す。
2023年7月、それまで交流のなかった3人でチームが結成され、アンカー神戸(※②)で片山喜市郎さんとつながり、KOBE LEATHERとコラボするモノづくりプロジェクトが始まった。多岐にわたるKawasaki製品の中で「神戸レザーの魅力を発信できるのは何か?」。ロボット、子ども用自転車などなどデザインを話し合い、CG部門に画像作成を依頼。議論を重ねて最終的に「Kawasaki初の電動バイクに牛さんの〝いのち〟を吹き込み、走らせよう」と決定したのが10月。そして12月、片山さんも「こんなに短期間で!」と驚いたという集中力とチームワーク、さらに社内、社外からの協力を得ながら「RE:BORN」が完成した。
うしろ姿を牛の顔に見立ててデザインした漆垣さんは「3Dデザイン上では牛だけど実際に牛に見えるのか?トライ&エラーの余裕はない!とても不安でした」と振り返る。「神戸牛の皮を無駄なく活用しようという活動KOBE LEATHERと地球環境に配慮するKawasakiが兵庫県内のレザー加工業者さんや職人さんなど多くの協力を得てつながることができました」と村上さん。「企画の段階から参加する仕事は初めてで社内でのプレゼンをはじめ、外部との話し合いや交渉は貴重な経験でした。皆さんに支えていただき完成しました」と鶴田さん。
24年1月、「RE:BORN」は世界最大級のインテリアとデザインの見本市「メゾン・エ・オブジェ パリ」に向けて旅立った。「評価してもらえる?『つまらない』と言われる?」。期待と不安を胸にパリへと旅立った。
(1月9日、川崎重工明石工場内ケイテック本社にて)
※① 川崎重工グループ。カワサキモーターサイクルのデザイン部門を源流とし、開発用3Dモデリングを活用した各種解析から生産・アフターサービス・商品プロモーション、およびIT領域にわたってモーターサイクル事業を幅広くサポート。川崎重工グループへも業務のウイングを広げ総合ソリューション企業として躍進している。
※② スタートアップ、企業、大学、研究者、市民が自らのデザイアや思いを多様な人々と共にカタチにし、イノベーションを創発するコミュニティスペース。神戸三宮阪急ビル15階に開設されている。
「メゾン・エ・オブジェ パリ」に参加して
株式会社ケイテック漆垣 和夏さん
昨年の夏から走り出し多くの方の力で進んできたRE:BORNが国を超え、いよいよ展示台まで上り感動で胸がいっぱいになりました。たくさんの方に見ていただけて本当によかったです。貴重な機会をありがとうございました!
株式会社ケイテック村上 里澄さん
展示会場に足を運ぶことで、家具/デザイン業界のトレンドや、フランスならではの価値観を学ぶことが出来ました。社内副業を通して得た広い視野と多様な人脈を大切にし、今後も様々な業務にチャレンジしていきます。
神戸レザー協同組合副理事長・永田良介商店6代目 永田 泰資さん(左より2人目)
今年のパリでの展示会は全体的にコロナ禍からの復活が感じられました。展示会の規模としても人出としても去年より一回り大きくなっていました。その中で今回、Kawasakiと組んで出展出来たことで神戸には神戸牛もあるし、KawasakiもあるそしてKOBE LEATHERもあるんだぞということを世界にPR出来た、いい機会だったと思います。
神戸レザー協同組合代表理事・STUDIO KIICHI代表 片山 喜市郎さん(左端)
フランスの展示会は3回目。毎回痛感させられたのは、神戸ビーフという名前の認知度の高さに驚かされました。神戸ビーフの副産物、皮革の活用にはフランスや海外の方々からの関心、評価も高く、日本のタンナーの皮革の技術により素晴らしい製品へ仕上げられたのも要因のひとつ。 神戸レザーがフランスで世界中の方々から評価を受けた事が自信につながりました。