12月号
KOBECCOオススメ 〜CINEMA〜
わたしたちはひとりじゃない
朝がくるとむなしくなる
代わり映えのしない毎日、朝がきてもスッキリとした気持ちで起きられない。会社を辞め、アルバイト先のコンビニではカスタマーハラスメントを受け、店長からやんわり人手不足の穴埋めを促される。人に迷惑をかけず、何も感じないように生きている希(唐田えりか)の日常は、学生時代の同級生、加奈子(芋生悠)と再会したことで、ほんの少し光が差しはじめるのだ。人間関係を築くのも、心のうちをさらけ出すのも、小さな積み重ねがあるからこそできるもの。彼女たちの感情の機微を丁寧に描く石橋監督の手腕と、俳優たちの演技が素晴らしい。若年層を使い捨てする社会の片隅で、「あなたは大丈夫」と背中を押す存在がどれだけ尊いことか。不器用な生き方をやさしく包み込むような、まさに宝物にしたい作品だ。
text.江口由美
『朝がくるとむなしくなる』(2022年 日本 76分)
監督・脚本:石橋夕帆
出演:唐田えりか、芋生悠、石橋和磨、安倍乙、
中山雄斗、矢柴俊博
配給:イーチタイム
元町映画館にて12月16日(土)より10日間上映。
©Ippo
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こんなふうに 生きていけたなら
PERFECT DAYS
『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』などで知られるヴィム・ヴェンダースが日本で撮り、カンヌ国際映画祭で高い評価を受け、米国アカデミー賞で日本代表作品として選出された話題作がようやく公開。待ってました!というファンも多いはず。
主人公・平山(役所広司)の毎日を追うことから映画は始まる。仕事に出かけ、昼は外のベンチで、夜は同じ店で食事、同じ時間に銭湯に行く。休日も特別なことはない。最後までその生活が変わることはないのに、映画が終わる頃には平山の生活が違って見えてくる…と思う。そこが、ヴェンダースであり、役所広司であり、この映画なのかもしれない。
平山がカセットテープで聴く60~70年代の音楽がいい。“聴く” 映画ともいえる。
text.田中奈都子
『PERFECT DAYS』(2023年 日本 124分)
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、 高崎卓馬
製作:柳井康治
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、
麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
製作:MASTER MIND 配給:ビターズ・エンド
シネ・リーブル神戸にて12月22日(金)より上映。
© 2023 MASTER MIND Ltd.
perfectdays-movie.jp
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