ひょうご・みんなで支え合い募金 NPO法人の今後のあり方について考えるシンポジウム・グループミーティング
教育・スポーツ, 神戸
コロナ禍での活動で見えてきた、縦横に〝つながる〟ことの大切さ
新型コロナウイルスの感染拡大により社会で弱い立場に置かれた人たちを支援する活動が窮地に追い込まれた。資金面で支えようと2020年5月、NPO法人、ボランティア団体、個人など有志が集まり「ひょうご・みんなで支え合い基金」(以下、支え合い基金)実行委員会が発足し、3次にわたる助成事業が行われた。23年3月末をもってその役割を終えた同事業の報告フォーラムが10月15日、コープこうべ住吉事務所7階大会議室で開催された。
実行委員長の頼政良太さんは、支援活動の継続を支え、コロナ後も発展していけるようネットワークづくりをしながら共に活動してきた3年間を振り返り、「終わりではなく今後に向けての始まりの会です」とフォーラム開催の意義を話した。支え合い基金事務局を務めてきた実吉威さんから3年間の概略が説明され、続いて助成を受けた団体の中から4団体が活動を報告した。
頼政さん、谷口享子さん、藤尾さおりさんによるパネルディスカッションでは藤尾さんから「草の根団体がたくさんあることに改めて驚きました」という感想があがった。谷口さんから「福祉に興味を持ち市民に寄り添いたいと思っておられる議員さんにこちらからお声がけしていくことも大切」という提言を受け、頼政さんは「待つだけでなく市民から〝ボトムアップ〟で社会に活動を〝見える化〟していけば国や行政、企業も変わっていくのではないか」と話した。
フォーラム後半はグループに分かれ、実行委員会のメンバーも加わって活発な情報交換と交流が行われた。
頼政 良太さん
ひょうご・みんなで支え合い基金実行委員長
被災地NGO協働センター代表 関西学院大学人間福祉学部社会起業学科助教
藤尾 さおりさん
ひょうご・みんなで支え合い基金実行委員
NPO法人そらしど代表理事
谷口 享子さん
ひょうご・みんなで支え合い基金選考委員
株式会社オフィスマーメイド代表取締役
ひょうご・みんなで支え合い基金から助成を受けた皆さんの声
食を通じた支援をきっかけに有志が集まった
NPO法人
スマイルポケット
代表理事
中村 伸一郎さん
「2021年度から22年度にかけて助成を頂き、子育て世帯へのお弁当提供や講演会、ひとり親世帯の交流の場づくりなど活動を進めることができました」
国籍や文化の違いを壁にせず、共に生きる
NPO法人
多文化センターまんまるあかし
理事長
久保 美和さん
「日本語学習教室を対象に助成金を頂きました。情報が伝わらず不安しかない外国人の女性たちやコロナ禍で環境が変わってしまった子どもたちの安心できる居場所になれたと思っています」
宝塚市内の小学校で放課後の遊び場づくり
認定NPO法人
放課後遊ぼう会
理事長
足立 典子さん
「7校でPTAや地域の皆さんと協力して遊び場を開催しています。コロナの影響でご寄付が減るなどして活動資金が減りましたが、この助成金で補填できました。今年度はコロナ前とほぼ同じ頻度で開催できています」
こどもの発達とえがおを支援する親と支援者の会
HIKARI.CAFE
代表
荒田 絵美理さん
「月1回のカフェ開催がコロナ禍でできなくなり参加費が減少しましたが、助成金を主にZoom維持費に当てオンライン開催も取り入れて続けることができました」
ひょうご・みんなで
支え合い基金実行委員
公益財団法人ひょうごコミュニティ財団代表理事
実吉 威さん
阪神・淡路大震災が起きた二日後、私は神戸に入りボランティア活動に携わりました。次第に団体や人が減っていく中、継続のための中間支援を続けた後、市民団体やグループと寄付を希望する人をつなぐパイプ役として2013年「ひょうごコミュニティ財団」を設立し、社会で弱い立場にいる人たちを支援する活動を資金面で支えてきました。
20年に立ち上げた「支え合い基金」は実行委員をはじめ多くのメンバーが地域の広いネットワークを使い、話し合いながら進めてきました。当団体独自の調査によると、市民セクターが資金や人材確保の面で困難に陥っていることが見えてきました。パネルディスカッションでもご指摘があったように、経済界、行政、議会などとの垣根が高く、特に市民から発信ができていない現状があります。「つなぐ」役目を担い、例えばテーマを決めた勉強会を開催して議員さんにも参加していただく、リタイアされた方と人材を必要とする団体をマッチングするなど、今後は助成金以外での支援がますます重要になると痛感しています。
東京大学教育学研究科
比較教育社会学コース
教授
仁平 典宏さん
ひょうごコミュニティ財団の事業には以前から興味を持っていましたので勉強のためフォーラムに参加させていただきました。私が数年前から評価を担っている赤い羽根共同募金は全国展開で数百万円規模ですが、小回りが利き自由度の高い数万円規模の助成金が地域にフィットし、すごく必要とされていることを初めて知りました。また、市民セクターが横はもちろん、政治や財界と縦にもつながる必要があるというお話を興味深く聞かせていただきました。
二極化社会といわれています。お金をたくさん持っている人たちが自分たちの責任を自覚して積極的に助成活動に協力することが重要です。ところが日本はWorld Giving Index(世界寄付指数)で世界百数十カ国中、昨年は最下位、今年も下から2番目。これではだめです。日本人は同じ集団の人には尽くすけれど、立場を越えた人への支援は低調です。この意識から変えていかなくてはならないと思います。