12月号
世紀の大発見! ヨドコウ迎賓館 発掘調査
近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライトの設計で、国の重要文化財に指定されているヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)の敷地内で発掘調査がおこなわれ、貴重な遺構が発見された。その現地見学会が10月31日に開催され、多くの見学者が訪ねた。
調査がおこなわれたのは、主屋東側のエリア。1925年発行の建築雑誌『新建築』に掲載されている図面には、主屋東側の一段下がったところに倉庫、温室、使用人住居があり、これらに向かう階段と屋根付きの渡り廊下も描かれている。
今回の発掘により、この渡り廊下の敷石がきれいな状態で現れた。敷石は主屋のほか旧帝国ホテルをはじめ、ライトが日本で建てた建築に用いられている栃木県産の大谷石で、正方形と長方形の石材を用いて規則的に組み合わされている。また、石材には主屋の外壁と同じような飾り彫りが施されており、細やかなところまで手を抜かないライトの性格が垣間見えて面白い。
渡り廊下の東端には温室の遺構が。温室へ続く階段やタイル張りの温室の壁の破片も出土している。残念ながら温室の大半と、さらにその北側の使用人住居が存在した場所は東側の道路が拡張された際、削られてしまっている。
そして今回、前出の『新建築』の文中でのみ記されていた池と、それまでその存在が全く知られていなかった滝の遺構が発掘された。
池の底はモルタルで、ところどころに石が埋め込まれていることがはっきり確認できる。また、池の縁に花崗岩を並べていたこともよくわかる。
滝は自然石を組んだもので、高さは1.4mほど。そこから池に向けて、モルタル張りの水路を水が流れたのだろう。滝に向かって左側には、クサビの穴が並ぶ巨石が。大坂城築城時にはこのあたりの石が使われたが、その際に運ばれずにうち捨てられたいわゆる〝残念石〟を庭園の景石としたようだ。
発掘現場のみならず、出土品も一部公開されたが、中でも目を惹いたのは麻袋に詰めて廃棄されていた擬石の材料。主屋の装飾部分に使用されているものと同じ材質とみられる。
今回の発掘は神戸大学名誉教授の足立祐司先生の監修、芦屋市教育委員会の監理でおこなわれたが、今後の調査については方法などを検討中とのこと。さらなる調査により、「芦屋の宝」の価値により磨きがかかることを期待したい。