2012年
4月号
4月号
追悼 奴雁(どがん)の人 園田正和さん ありがとう
今年1月に逝去した兵庫信用金庫会長・園田正和さん(享年八十七)のお別れの会が、3月8日、神戸ポートピアホテル「大輪田の間」で開催された。
園田さんが、兵庫信用金庫の前身である神和信用金庫の理事長に就任したのが、まだ40歳前後の頃で、現在、統廃合が進む金融業界にあって、信用金庫の創業者が半世紀にわたり、第一線で活躍するという稀なケースでもあった。神戸商工会議所では常任議員、姫路商工会議所でも議員を長年にわたって務めるなど、地元財界のご意見番として多くの財界人が相談に訪れた。また、老若男女を問わず多くの方々から慕われ、交友関係が広いことでも知られていた。
会では、生前にラジオ番組に出演した際の録音テープも流され、親交の深かった中内㓛さん(ダイエー創業者)、鬼塚喜八郎さん(アシックス創業者)とのエピソードを歯に衣着せぬ口調で語り、在りし日の園田さんを偲ばせた。豪放磊落なイメージが強い一方、誰に対しても細やかな気配りで、人間味あふれる温かい言葉をかけていただけるという一面も園田さんの魅力であった。
弊誌では、「人間なんて死んでしもたら、いくら弔辞でええこと言われても意味ない。俺が生きてる間に、みんなの弔辞を読みたいな。俺の生前回顧録をつくってくれへんか」とのお話をいただき、各界から45名の方々からご寄稿いただき『奴雁の人 園田正和交友の譜』を上梓させていただいた。その中には、貝原俊民さん(前兵庫県知事)、故藤田まことさん(俳優)などが名を連ねた。
「奴雁」とは雁が野に降りて餌をついばむとき、不測の事態に備えて、常に周囲に気を配る一羽の雁を指す。神戸経済の浮沈を温かな目で見守りつづけた園田さんに例えてタイトルにさせていただいた。
園田さんのご冥福を心よりお祈りします。