12月号
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」第171回
明石市民フォーラム 「目指せ!健康長寿Part2 ~しっかり噛めていますか?~」について
─毎年恒例の明石市民フォーラムですが、2025年で何回目になりましたか。
堀松 2025年で第27回を迎えました。今回は例年よりやや早く9月27日に開催し、約200名くらいの方にご参加いただきました。会場は今回も明石市立市民会館中ホールでした。
─今回は何をテーマにしましたか。
堀松 今回も前回と同じく「目指せ!健康長寿」という前向きなタイトルで、そのPart2としてお口の健康にスポットを当てて、サブタイトルを「しっかり噛めていますか?」としました。
─どのようなプログラムでしたか。
堀松 3部構成で、第1部は基調講演、第2部は実践的な内容、第3部はシンポジウムというスタイルで進行しました。
─第1部の講演ではどなたがどのようなお話をされましたか。
堀松 大阪歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科科長の糸田昌隆先生に「『噛めない、最近よくムセる!などなど』もしかするとお口のフレイルかも?」を演題に、オーラルフレイルについてお話しいただきました。オーラルフレイルとは口の機能が低下しつつある状態のことで、固いものが食べられない、むせる、食べこぼす、口が渇きやすい、滑舌が悪いなどの軽微な衰えがみられるだけでなく、低栄養や筋力低下などの引き金になることもあるので注意が必要ということでした。また、対策として食事の工夫や運動、社会参加など具体的な事例を交えながらお話しいただきました。
─オーラルフレイルかどうかは、どのように判断すれば良いのでしょうか。
堀松 講演では1;自分の歯が19本以下であるか、2;半年前と比べて固いものが食べにくいかどうか、3;お茶や汁物でむせることがあるか、4;口の渇きが気になるか、5;日常の会話ではっきり発音できないことがあるかの5つのチェック項目(Oral frailty 5-item checklist; OF5)を挙げておられました。このうち2つ以上に該当するとオーラルフレイルが疑われるそうです。早めに気付くことで早めに対策することが大切ですね。
─第2部はどのような内容でしたか。
堀松 大阪歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科専任歯科衛生士の今井美季子さんに、オーラルフレイルや嚥下などの実践例や事例を紹介していただきました。特に「パ」「タ」「カ」「ラ」と声に出すことで口や舌の筋肉をトレーニングして嚥下機能の維持や向上を目指す「パタカラ体操」の実演や、お口のトレーニングをサポートするスマホアプリの紹介は、来場者のみなさまも興味深い様子でご覧になっていました。
─第3部のシンポジウムはどのようなテーマでしたか。
堀松 パネリストに第一部でご講演いただいた糸田先生、兵庫県栄養士会副会長の中森良子さん、兵庫県歯科衛生士会専務理事の山口恵さん、兵庫県介護支援専門員協会明石支部副支部長の熊谷奈緒美さんを迎え、私が座長となって「お口の元気が健康のカギ!お口からはじめる健康長寿」をテーマにさまざまな分野の視点からオーラルフレイルについて理解し、正しい口腔ケアライフを送れることを目的におこないました。
─糸田先生からはどのようなお話がありましたか。
堀松 誤嚥について、嚥下は反射運動であることや、誤嚥性肺炎の原因にもなること、誤嚥が起きるメカニズムを説明されました。口の機能が落ちてくることが原因なので、口腔ケアをすることが大事とお話しされていました。
─中森さんからは栄養士の視点からいろいろなアドバイスがあったそうですね。
堀松 咀嚼機能が落ちた方に対し、食べやすいからといって何でもかんでも刻むのではなく、まずはちゃんとした形で出すことや、一緒に食べる人や食事の場所、食器の色などを含めて食卓の雰囲気作りにも心を配りましょうとアドバイスがありました。これらのことで認知による咀嚼の準備がスムーズになり食事の楽しみが増すとのことです。また、在宅療養などで栄養が不足しがちになって栄養補助食品を活用する際には料理に混ぜ込むと良いと、目からうろこが落ちるような工夫の方法を具体的に教えていただきました。
─歯科衛生士の山口さんからはどのようなお話がありましたか。
堀松 歯を大切にすることが咀嚼機能の維持にはとても大切であり、入れ歯も道具としてしっかり使いこなし、奥歯でしっかり噛みましょうとお話されていました。また、かかりつけの歯科医を持ち、定期的にメンテナンスすることが全身疾患の予防にも結びつくとのことでした。口は体内への入口ですから、口腔内の衛生状態の悪化は感染症を引き起こしかねません。それ以外にも口の健康は糖尿病や高血圧、認知症にも関係しますので、かかりつけの歯医者さんにしっかりとケアしてもらうことは非常に大事なことですね。
─熊谷さんからはどのような話題が挙がりましたか。
堀松 明石市では75歳以上の方は無料で歯科健診が受けられるとの情報提供がありました。また、介護保険で利用できる歯科の訪問診療があることや、退院などの際に病院の地域連携室を通じて管理栄養士に今後の食事の相談ができることなど、在宅療養の際にさまざまなサポートが受けられることが紹介され、ぜひ役立てていただきたいとお話されていました。
─来年も明石市民フォーラムを開催しますか。
堀松 テーマや日程などは企画・調整中ですが、開催予定です。詳細が決まり次第明石市医師会ホームページなどでお知らせしますので、次回もみなさまぜひご来場ください。

第1部では、大阪歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科科長の糸田昌隆先生が講演

第2部は、大阪歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科専任歯科衛生士の今井美季子さんが、オーラルフレイルや嚥下などの実践例や事例を紹介した

第3部のシンポジウムの座長を務めた、本稿の堀松徹雄先生

パネリストに糸田先生、兵庫県栄養士会副会長の中森良子さん、兵庫県歯科衛生士会専務理事の山口恵さん、兵庫県介護支援専門員協会明石支部副支部長の熊谷奈緒美さんを迎え、堀松先生が座長となって第3部のシンポジウムが行われた













