10月号

ひょうご神戸まちかど学だより|「川と夏の音楽文化」夏のレクチャー・コンサート|神戸ゆうゆうの里
8月16日、神戸市北区の有料老人ホーム、神戸ゆうゆうの里で、入居者を対象としたレクチャー・コンサートがおこなわれた。夏真っ盛りの中で少しでも涼をと川や水をテーマに、前半は兵庫・神戸のヒストリアンこと田辺眞人先生のレクチャー、後半はトークを交えながらのコンサートという2部構成のプログラムで、80席用意された座席はすぐ満席となり急遽増席されるという大入り満員となった。
まずは田辺先生のレクチャー。この日は五山の送り火の日ということで、お盆の供養にも使われる経木塔婆を取り出し、「この形は、仏教で世界を構成する5つの要素、五輪です」。
五輪とは地・水・火・風・空であり、水は仏教の世界観で世界の要素として不可欠であるばかりか、中国の五行思想でもギリシャ哲学でも万物の源とされていると解説した。
そしてその水が流れる川の文化の話題へ。日本最古の川の名前について、日本書紀では「簸川」、古事記では「肥河」で、いずれも「ひのかわ」とよぶ。この「ひ」とは農業を支える霊魂をあらわすと田辺先生。そして全国に日野川、氷川、樋井川、揖斐川など「ひ」の川があるが、これらは穀物の実りをもたらす霊力を持つ地域の重要な川であり、実は兵庫県最大の河川、加古川もかつては「ひのがわ」とよばれた。その上流の「氷上」や流域の聖地「日岡」など地名に「ひ」の痕跡が残るという田辺先生の解説に、参加者たちは頷きながら耳を傾けた。さらに中国とヨーロッパの川の文化の話題も時事ニュースを交えながら紹介し、最後に「毎日の生活で出会う地名や歴史のできごとにもっと関心を」と講演を締めた。
続いておこなわれたコンサートでは、フルートの窪田香織さん、ピアノの勝部藍里さんが、涼やかなブルーのドレスでヨハン・シュトラウスの「美しく青きドナウ」、シューマンの「ライン」、スメタナの「モルダウ」など川に関するクラシックの名曲をまさに流れるように奏で、田辺先生が曲や作曲家を歴史的背景を交えながら紹介。最後はアメリカ民謡「赤い河の谷間」を会場全体で和やかに歌って終了、かと思いきや、アンコールで美空ひばりさんの生前最後の曲「川の流れのように」が。その美しい旋律が心の琴線に触れたのか、「ゆるやかに いくつも時代は過ぎて」と、歴史や人生と重ね合うように歌う声がどこからともなく響いた。

川の文化史について多角的にレクチャーする田辺先生

コンサートはフルートとピアノの二重奏で

涼やかで澄んだ音色を奏でるフルートの窪田香織さん

せせらぎのように清らかにピアノを弾く勝部藍里さん

会場は座席が急遽増設される大入り!
ひょうごの民俗芸能祭 第三弾 ~五国の川と文化遺産~
日時 11月1日(土) 13:30開場/14:00開演
会場 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
出演 千谷麒麟獅子舞(但馬)、デカンショ節/水無月祭 打込囃子(丹波)、
恵比寿大黒舞(播磨)、中国獅子舞(摂津)、淡路人形浄瑠璃(淡路)ほか
案内人 田辺眞人(兵庫津ミュージアム名誉館長)・大森くみこ(活動写真弁士)
チケット 1,000円(指定席)
※芸術文化センター、チケットぴあ、ローソンチケット、イープラスで発売
問合せ 芸術文化センターチケットオフィス TEL.0798-68-0255
歴史家 田辺眞人のミニレクチャー
YouTube、TiK Tok 登録・フォローよろしく
YouTubeはこちら
Tik Tokはこちら












