9月号

ひょうご神戸まちかど学だより|椎名誠監督作品「うみ・そら・さんごのいいつたえ」|兵庫津ミュージアムで上映会
7月27日、兵庫県立兵庫津ミュージアムで、椎名誠監督作品「うみ・そら・さんごのいいつたえ」上映会と田辺眞人名誉館長のミニ講座が開催された。今回は一昨年に創業100年を迎えた神戸初のロースター、エキストラ珈琲の小室こゆみ社長がこの企画のきっかけとなったことなどから、同社の共催としておこなわれた。
映画鑑賞はダイナミックシアターにて。上映の前に長年椎名さんの秘書を務めた「椎名誠旅する文学館」初代館長の大西郁子さんが「椎名も今回の企画を大変喜んでいました」とあいさつし、椎名誠さんの映画撮影について解説した。親しいアウトドア仲間と結成した「怪しい探検隊」の活動を8ミリで撮影していたことなどさまざまな秘話も織り込まれ、集った椎名ファンたちもにこやかに傾聴。そして、どれだけ自然の素晴らしさを見せることができるかに主軸をおいて制作されたという作品「うみ・そら・さんごのいいつたえ」を楽しんだ。
上映会とともに、兵庫津ミュージアムの田辺眞人名誉館長によるミニ講演会「椎名誠さんと私―十五少年漂流記をめぐって―」も開講。お話はタイトルの通り、田辺先生も椎名さんも幼い頃に愛読したジュール・ヴェルヌ作の冒険小説『十五少年漂流記』を軸に展開し、まずはニュージーランドのオークランドの港で少年たちだけが乗り込んだ帆船が遭難し、どことも知らぬ陸地に漂着、探索してここが無人島と知り絶望を感じつつも2年ほど力を合わせて生活し、やがて船乗りに発見され、ここがマゼラン海峡西口のハノーバー島と知り、最後は汽船で帰還するというあらすじの紹介からスタートした。
そしてこの無人島のモデルとなった島について、田辺先生がニュージーランドのマッセイ大学勤務時代に交流したノルウェーの人類学者で、ポリネシア研究の第一人者でもあるトール・ヘイエルダール氏による「コンティキ号」での航海実験の結果や、島の中心部に大きな淡水湖があり東に大海原が広がっているという作品中の描写などから分析。その結果、ヴェルヌがモデルとしたのはニュージーランド東方約800kmに浮かぶ孤島、チャタム島ではないかという説を、実際に田辺先生がそこに行ったときの様子を交えながら披露した。
実はこの話の内容を、2002年に田辺先生が研究論文にまとめた。するとそれを読んだ椎名さんが直接田辺先生の大学研究室を訪ね、その後ハノーバー島とチャタム島を実際に訪ね、『「十五少年漂流記」への旅─幻の島を探して─』という作品が生まれたという逸話も。まさに〝知の冒険〟とも言える内容の講演だった。

上映前に「椎名誠旅する文学館」初代館長の大西郁子さんがスピーチ

『十五少年漂流記』に秘められた真実にせまる田辺眞人先生

熱心に講演を聴く約120名の参加者

トール・ヘイエルダール氏(右)と田辺先生〔1990年〕

椎名誠さん著『「十五少年漂流記」への旅─幻の島を探して─』(新潮文庫)
令和7年度 風土と文化の歴史学
・日程とテーマ 講師:田辺眞人
①9月18日(木) 「世界とは─2500年前の世界─」
②10月9日(木) 「アフラシア(旧)世界の一体化」
③11月20日(木) 「グローバル世界の成立」
・時間 各回とも14:00~15:30(開場13:15)
・会場 ピフレホール(新長田駅前)
・受講料 3回セット3,000円 ・定員 250名(申込先着順)
申込・問合せ 兵庫県芸術文化協会 TEL.078-321-2002
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歴史家 田辺眞人のミニレクチャー
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