10月号

「無汸庵の世界」の魅力を伝えていきたい。
綿貫宏介氏の美意識を感じる革製品を販売
伝説の美術作家、無汸庵・綿貫宏介氏の世界観を守り、未来へと繋げる活動を行う「無汸庵宗家」。今は亡き綿貫氏が自ら製作し、愛用していた革の懐中時計ケースをもとに「STUDIO KIICHI」が再構築。スマホケースとして販売をスタートさせる。
有馬の温泉宿「陶泉 御所坊」や「有馬山叢御所別墅」、「小鼓」で知られる西山酒造場、日本茶の老舗「宇治園」・・・。唯一無二の趣を湛える空間建築物、ロゴやパッケージは、美術作家・綿貫宏介氏が手掛けたもの。何ものにもとらわれない自由自在な生き方「応物無汸」の哲学を「無汸庵」という号に込め、陶芸、ガラス、絵画、詩、書、建築など、様々なジャンルで独自の世界観を確立した。2021年に綿貫氏が他界後、氏が設立した会社「無汸庵宗家」を継いだのが、「御所坊」グループを営む金井家16代目の一篤氏だ。宿づくりを通して氏の考え方に深く携わってきたこともあり、後継者に指名。綿貫一篤氏として、綿貫氏の作品の保護や技術の継承、作品群を体感できるアートガイドなどを実施する。
「綿貫先生が亡くなられる前に『君の記憶に残ることで、僕は永遠に生きることができる』とお話しされていて、先生の作品に宿る哲学や美意識を絶えさせてはいけないと考えました」と語る一篤氏。「アーティスト」と呼ばれることを嫌っていた綿貫氏は、自らの活動を「人生業」と表現。自身の多様な創作物を人生の延長であると見なし、それを「無汸庵」の芸術のあり方としていたという。
「例えば、壺ならば壺という作品そのものではなく、壺をどこにどのように置くのか?と考える。生活様式や空間との関係性を意識し、生きることと芸術を創造することが分離していないのです。伝統的な物事の作り方にこだわらず、自分がいいと思うものを作る。そんな先生の世界観が宿る作品を通して、自由な生き方や生きる豊かさを伝えていきたいと思っています」。
一篤氏の想いを汲んだのが革工房「STUDIO KIICHI」の片山喜市郎氏だ。綿貫氏が生前に手作りしていたレザーアイテムを研究し、スマホケースとして再構築。一篤氏がプロデュースするギャラリー&ショップ「ガレリーア・レティーロ・ドウロ」で販売。あふれる情報に惑わされがちなスマホは、ケースへしまってデジタルデトックス。自らを偽らない生き方を貫いてきた綿貫氏をちょっと真似して、内なる自分に目を向けるきっかけになるかも。

綿貫氏手作りの「懐中時計ケース」を「スマホケース」へとリ・デザイン。収納品は異なっても時を刻むアイテムへの想いやスタイルは極力同じに。革の色味、形や革糸の結び方など、細部までこだわって再現した。革や革糸のカラーは複数色あり
陶器窯『陶々窯』の今井勝利氏が焼き鏝でロゴマークを入れて完成。『陶々窯』では綿貫氏の精神を受け継ぎ、陶器の新作の製造・販売を行っている


㈱無汸庵宗家の代表取締役 綿貫一篤氏(右)とSTUDIO KIICHIの片山喜市郎氏(左)。二人が出会ったのは神戸の未来について語り合う県主催の意見交換会。同世代ということで意気投合し、コラボ作品販売へとつながった。
(綿貫宏介氏が有馬に築いた陶器窯『陶々窯』にて撮影)

ガレリーア・レティーロ・ドウロ
築100年という御所坊の土蔵を改装した趣ある空間で、綿貫宏介氏の作品を取り扱うギャラリー&ショップ
【住】神戸市北区有馬町835(金の湯の向かい)
【電】078-904-0858
【営】9時30分~17時30分
【休】不定休
「神戸歴史遺産」を残す、ふるさと納税
東灘区にある綿貫宏介氏の実家の茶室「無汸庵」は.国登録有形文化財に登録。神戸の貴重な宝である歴史遺産を守り、受け継いでいくために、ふるさと納税による寄付を募集中(2025年12/31まで)
https://www.furusato-tax.jp/gcf/4066?srsltid=AfmBOopL9uHffetjli2YcghpsRaMAlEXApawwUEF_GGAXVi7wnjUgV_l












