1月号
ベトナム元気X躍動するアジア 第13回|
新刊書『ベトナムの経済発展と未来』紹介
ベトナム社会主義共和国は本年四月三〇日に戦争終結五〇周年、九月二日に独立八〇周年を迎えます。その歴史の中で本格的な経済発展は一九九五年の米国との国交正常化とアセアン加盟から始まり、本年は三〇周年です。他方、この一月二〇日に就任予定の米国トランプ次期大統領政権の対中国政策の変化はベトナムに少なからぬ影響があるでしょう。今回の新刊書はそれらを検討するための好著です。
文・ 上田義朗
はじめに
藤江昌嗣・杉山光信・上田義朗・東長邦明編著『ベトナムの経済発展と未来―日本の開発協力と日越企業の経営・人材戦略を通じて―』芙蓉書房出版(二〇二四年一二月六月、定価三五〇〇円+税)が、戦略研究学会出版プロジェクトの一環で刊行されました。
本書は、数回に及ぶ現地訪問や研究会の成果をまとめた三八一頁の大著ですが、私の執筆担当は第8章のみ。本書の出版は、実質的な編者である藤井先生(明治大学経営学部教授・同大学MOS研究所所長)を始め杉山先生(明治大学文学部元教授)と東長先生(戦略研究学会常任理事・事務局長)の多大な貢献と芙蓉書房出版の奥村さんの忍耐に依拠しています。改めて感謝を申し上げます。
本書の構成―政治経済学、経済と経営、マクロとミクロ、歴史と未来
本書の特徴は、日本とベトナムにおける「経済安全保障」の考究であり、それは必然的に政治経済学が基底です(第1章・終章)。また経済成長(第2章)と製品原価(第5章)、経済活動のマクロとミクロの分析が一冊に収録され、ベトナムの経済と企業経営が多面的に検討。その構成は第一部が歴史的考察、第二部が事例研究です。
【第一部】 第1章 日本のODA政策とベトナム、第2章 「アジアの奇跡」と経済発展、第3章 の一九九〇年代のベトナムの経済発展と日本・ベトナム貿易、第4章 フォーク株式会社の一九九〇年代の取り組み、第5章 外国直接投資(FDI)は国民生活に役立つか?
【第二部】 第6章 巨大都市ホーチミン市の変貌とFDI、第7章 ベトナムの産業政策、IT化への歩み、第8章 ベトナム企業の新展開と課題、第9章 ビングループのスマホ事業への進出と撤退、第10章 タイガー・ベトナムのケース、第11章 ベトナムにおけるガス供給機器メーカーのグローバル戦略、終章 ベトナムの未来。
第8章の覚書―アジアビジネスの醍醐味と未来
私が執筆の第8章は、日本で言う会社法(企業法)改訂の歴史を紹介し、特に少数株主権の拡大や企業統治の課題に関心を向けています。また日系企業の贈収賄事件を通して、アジアビジネスの現実の法的にグレーな部分を「直視」し、その醍醐味や将来展望に言及しました。
以上、より詳細はぜひ本書をお読みください。
■上田義朗(うえだ よしあき)
流通科学大学名誉教授
日本ベトナム経済交流センター副理事長
外国人材雇用適性化推進協会(ASEO)代表理事
合同会社TET代表社員・CEO