11月号
今月の映画
真実を知ったとき、
人が人を信じる想いに涙する
『正体』
始まりからドキッとする。横浜流星演じる主人公・鏑木は死刑判決を受けた殺人事件の容疑者。その鏑木が脱走する。悪い人で怖い人。なのに、逃走中の彼に関わる人たちは皆そうは見ない。鏑木は悪人? 本当に?
人は目の前にいる他者を、どこまで信じることができるのか。吉岡里帆演じる沙耶香の存在が、物語のキーとなる。悪を取り締まる側の警察、検察の力は絶対的。けれど本当に真実を見ているのか。間違いはないのか。鏑木を追う刑事・又貫役の山田孝之は周囲が驚くほどの集中力で挑んだという。人の人生を左右する、この職業の重責を背負って。
主題歌はヨルシカの書き下ろし『太陽』。祈るような歌が賛美歌のように作品に寄り添う。
原作者であり小説家の染井為人は「映画は小説のアンサー作品のようだ」と話す。小説を読んだ方にも藤井道人監督が描くラストシーンを観てほしい。
原作:染井為人『正体』(光文社文庫)
監督:藤井道人
脚本:小寺和久、藤井道人
出演:横浜流星 吉岡里帆 森本慎太郎 山田杏奈
前田公輝 田島亮 遠藤雄弥 宮﨑優 森田甘路
西田尚美 山中崇 宇野祥平 駿河太郎/木野花
田中哲司 原日出子 松重豊 山田孝之
配給:松竹
©2024 映画「正体」製作委員会
2024年11月29日(金)全国公開
公式サイトはコチラ
倉本聰が書いておきたかったこと
人間にとって『美』とは何か?
『海の沈黙』
脚本家・倉本聰の映画が36年ぶりに公開される。重要な舞台となるのは北海道。多くの倉本作品が生まれたこの地で、構想に60年を費やしながらも、まだ辿り着いていないという“問い”を描いている。
軸となるのは美術作品の贋作。美術品の価値とは何か。社会的権威の保証? 有識者の評価? つけられた値段? 観る者の感性が置き去りになっている現代、その問いは、俳優たちの台詞によって矢のように刺さる。
主人公・津山竜次を演じるのは本木雅弘。天才画家と呼ばれながらも、ある出来事を機に行方知れずに。世界に認められた画家・田村の妻・安奈(小泉今日子)は津山のかつての恋人。長い時間お互いを想い続けた男女の物語が、もうひとつのテーマとなっている。
芸術家の苦悩も人間の業も愛情も、雄大な自然と古くからある美しい街並みが受け止める。にしてもせつない。
原作・脚本:倉本聰
監督:若松節朗
出演:本木雅弘
小泉今日子 清水美砂 仲村トオル 菅野恵/石坂浩二
萩原聖人 村田雄浩 佐野史郎 田中健 三船美佳 津嘉山正種
中井貴一
製作会社:インナップ
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
©2024 映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD
2024年11月22日(金)
OSシネマズ神戸ハーバーランド ほか全国公開
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text.田中奈都子