01.28
フランク・ロイド・ライトの名建築にふれる
大阪船場で財を成した商人たちが、
山を切り開いて、芦屋に“自分の楽園”を築きます。
渡辺節、安井武雄、村野藤吾など日本を代表する建築家が、個人宅を設計しています。
まさに、“名建築の博物館”の様相を呈したようです。
その中でも、燦然と輝くのが、旧山邑家住宅(現・ヨドコウ迎賓館) です。
設計は、近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライトです。
大正以降に建てられた鉄筋コンクリート建築として、初の重要文化財にも指定されました。
コンクリートの重文って珍しいですよね。
ライトが唱えたのは「有機的建築」という建築思想です。
これは、自然界に存在する生物のように、機能的で美しい、
周囲の環境に溶け込むような普遍的なデザインを建物に取り入れる考えです。
このヨドコウ迎賓館は、六甲山の中腹に建てられ、
まるで木々と調和しているかのような佇まいです。
天井照明はありません。
なるべく自然の光をとり込みために、天窓に小窓を100以上設け、
採光のみならず、風やきれいな空気も邸内に引き込んでいます。
建材には、今では貴重な栃木県産の大谷石を使用。
今では、ほとんど採れないようです。
大谷石の成分は、火山灰で、とてもやわらかく、文様などを彫刻しやすかったことも選ばれた理由のひとつです。
しかし、大谷石はやわらかいがゆえに経年劣化もはげしく、
頻繁に修復が必要となります。
昨年11月から約2年をかけて、修復工事が始まりました。
修復ではこの大谷石を砕いて、砂と混ぜ型に入れて固め、再生していきます。
建材に使用さえている石材は、ほぼ大谷石なので、気の遠くなるような作業になります。
ところで、このヨドコウ迎賓館、
特にアメリカから見学に来る方も多いそうです。
ライトはアメリカ人です。
ライトの建築は、日本とアメリカ以外にはあまり残っていません。
ライトは生涯で800ほど設計して、
うち400くらいが建てられましたが、
日本では設計は12、実際に建てられたのは6つです。
「邸宅で、完成当時の姿を残している」となるとヨドコウ迎賓館ぐらいしかないようです。
そういう意味でも建築的な価値が高いようです。
現在、平成30年末の完成をめざして、修復工事が進みます。
完成後に、ぜひご覧ください。