3月号

建築構造 インサイト|Chapter 5 和田ターミナル東京倉庫
和田ターミナル東京倉庫
「どう建てるのか?」を追求する平尾工務店にとって、構造は大きなテーマです。おなじみの建物から世界的名建築までさまざまな建築物について、「構造」という視点を交えながら一緒に学んでいきましょう。
構造物にかかる応力は圧縮・引っ張り・せん断・曲げの4つです。そのうちせん断と曲げは圧縮と引っ張りの〝合わせ技〟みたいなところがあるので、まずは圧縮と引っ張りに強いものが構造物の素材として好ましいと考えられます。
コンクリートは圧縮にすこぶる強いのですが、引っ張りの力には比較的弱い。一方、鉄鋼は圧縮されるとぐにゃりと曲がってしまいますが、引っ張りにはとても強い。この両者を力のやりとりが生じるように一体化させた鉄筋コンクリートは、圧縮にも引っ張りにも強い建築素材と言えるでしょう。
鉄とコンクリートを組み合わせるメリットはほかにも。鉄は熱に弱く、空気に触れると酸化、つまり錆びてしまいもろくなります。ところがコンクリートは耐熱性があり、しかもアルカリ性ですので、鉄を覆うことで熱から守るとともに酸化も防ぎます。その上、鉄とコンクリートは熱膨張比率がほぼ等しく、温度が変化しても同じだけ伸び縮みするので、コンクリートと鉄筋がズレることなく安定した性能を発揮します。鉄筋コンクリートは奇跡の建築素材なのですね。
現在でこそ鉄筋コンクリート造(RC造)は剛性、耐火性、耐久性の高さで建築の主要な構造種別となっていますが、実はその歴史はまだ百数十年です。鉄筋コンクリートが発明されたのは19世紀中頃のフランスで、その後ドイツで理論化され、1892年にフランス人技術者のフランソワ・アンネビックが現在のRC造の先駆けとなるアンネビック工法を開発し実用化が進みました。
鉄筋コンクリートの技術が日本に伝わったのは明治の中頃ですが、実はその先駆の地は神戸だとか。諸説ありますが、日本初のRC造の構造物は1903年に建設された神戸の若桜橋といわれています。
そして日本初の純RC造の建築物(諸説あり)が、かつて和田岬にあった和田ターミナル東京倉庫です。まず平屋で約464坪のD号が1908年に竣工。そしてその翌年にはわが国初の多階建てRC造建築であるG号が完成し、鉄筋コンクリートで柱や梁を構造的に一体化するアンネビック工法により南北152・4m、東西40・2mの2階建てという大規模な倉庫空間を実現しています。1階の一部はピロティになっていて、ここに線路とプラットホームを設けて貨物列車が乗り入れていました。このプランは、強固な鉄筋コンクリートゆえに可能になったのでしょう。
設計を担当した白石直治は、建築の専門家ではなく土木技師でした。このことからも、RC造が土木から建築の分野へと展開していったことがわかります。

わが国初の多階建てRC造建築の和田ターミナル東京倉庫G号(モノクロ資料から描き起こしているため、カラーは想像です)

鉄筋コンクリートで柱、梁、スラブ(天井・床)を構造的に一体化させるアンネビック工法とその配筋の例












