2025
09.29

WEB版・スペシャルインタビュー|
シャンソン歌手 クミコさん

カテゴリ:Web限定

神戸で歌う
~人生は美しい、シャンソンティックな歌たち~

 歌手クミコさんがベストアルバム『シャンソンティックな歌たち』をリリース、10月12日に神戸朝日ホールにて『コンサート2025 わが麗しき歌物語Vol.8~人生は美しい、シャンソンティックな歌たち~』を開催します。
“クミコ”という名前で歌い始めて25年。記念の年にお話いただきました。

Q.タイトルの「シャンソンティック」とは?
シャンソンも含めて、シャンソンのような世界観をもつ楽曲をそう呼んでいます。造語なので明確な定義みたいなものはないのですが、私の考えるシャンソンは詞に物語性のあるもの、人生の機微をユーモアやエスプリを効かせた言葉で歌う、言葉に意味合いをもった歌です。

Q.「語るように歌う、歌うように語る」のがクミコさんのシャンソンだと、以前、話してくれました。
お芝居を演じるように歌うシャンソンには、のめり込むことができなくて…。「演じるように」ではなく「語るように」。その方が私に合ってる気がしたんです。もともとそんなにシャンソンに詳しくはなかったので、良くも悪くも、そこで客観性が生まれたんだと思います。

Q.フランスと日本のシャンソンは違うんですね。
フランスのシャンソンって、歌詞に繰り返しがなくて、それだけ言葉が多いんです。とにかく喋りたい、言葉でいっぱいいっぱい伝えたい人たちなのでしょうね。
それでいうと日本は、俳句、和歌。シンボリックな言葉を選びます。
「上を向いて歩こう」と言われたら、聴いている人の数だけ「上」がある。「上」について説明はしない。各々の想像に任せます。フランスなら、「上」をこれでもかと言い尽くすんじゃないかと思います。
そこに気づいた時、「フランスの歌詞を理解するのは難しいな」と思いました。私が、自分が理解できるシャンソンだけを歌っているのはそんな理由からです。私の感性は芯から日本人なんだと思います。

Q.訳詞は日本の感性で書かれているのですね。
その通り。例えば、フランスで歌われている『愛の讃歌』は反社会的な表現が多くて、そのまま訳していたら、倫理観のある日本人には受け入れられなかったでしょう。恋に生きるフランス人とは国民性が違いますから。けれど、詩人・岩谷時子さんが、「あなたの燃える手で私を抱きしめて」と言葉をつけた瞬間、特に女性が「わかる!」「素敵!」と共感して、『愛の讃歌』はまるで歌謡曲のように広がりました。日本の女性がもっている、恋への憧れ、魔性性、秘めた裏の顔がくすぐられたのかもしれません。

Q.では、クミコさんがくすぐられた歌は?
『アプレ・トワ』。越路吹雪さんの代表曲です。「女ですもの、明日泣くわ」と、去っていく男性をまだ愛しているのに強がるんです。かっこいいじゃないですか。泣き崩れたりしないで、前を向いて見送るなんて。初めて聴いた時は20歳そこそこで、そんな気持ちはわかるはずもないのに「わかる!」と思いました。
岩谷さんっていろんな面をもっていらしたのでしょうね。和服姿で楚々としていらしたけど、心のうちは強い方だったのかも。

Q.公演タイトルにある『人生は美しい』はどんな曲でしょう。
スタンダードといえる曲ですが、私はこれまで歌いませんでした。「人生は美しい」という言葉に引っかかっていたんです。若い頃は、何でもはすに見ちゃうところがあって、本当に美しいんだろうか、と。
けれど、詩を書いた古賀力さんの本を読んで、人生は美しくなければいけない、美しいことを大前提にしていかなければ、先には進めないと思うようになりました。古賀さんは戦争中、防空壕から這い出て見た世界を、心底美しいと思ったそうです。色々な出来事が起こっている今、戦後80年の今、歌っておきたいと思いました。

Q.“平和への想い”を込めた歌、『INORI~祈り~』も再録音しています。
前回レコーディングしたのは15年前。あの頃の方が平和だったのかもしれません。平和を祈り、歌ったのに、15年経っても変わらなかった。虚しさがあります。
反戦歌を歌っているつもりはありません。交戦したい人など、どこにもいないのですから、言うまでもなく、歌は平和を願い歌うものです。でも大きな声では歌わない。私の歌を静かに歌う、それだけです。願いはいつか人の心に届くだろうと希望をもっています。

Q.これから歌いたい曲はありますか?
好きだけど、自分では歌おうと思えない曲があります(笑)
『三つの小さな音符』。宝物みたいに大切にしています。3拍子の小品で美しい曲。コラ・ヴォケールが歌っているのを聴いて泣けちゃって。それ以来、「いい曲だから、みんなコラ・ヴォケールの歌を聴いて!」って思っています(笑)
名曲を歌い継ぐのも歌い手の仕事だとは思っているので、またいつか……。

―ありがとうございました。
秋の神戸でお待ちしています!
text.田中奈都子

〈公演情報〉

『コンサート2025 わが麗しき歌物語Vol.8
~人生は美しい、シャンソンティックな歌たち~』
日時:2025年10月12日(日)15:30開演
会場:神戸朝日ホール
詳しくはコチラ https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/10653

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