10月号
出会いと学びの旅から Vol.22
オランダのアンネの家
オランダを旅行中、アムステルダムの運河沿いにあるアンネの家を訪ねました。アンネ・フランク一家がナチスから身を隠して暮らしていた隠れ家がそのまま公開されていました。1947年に出版された「アンネの日記」は日本でもよく読まれ、私も本を読み、映画も見ましたので、ここを訪れたときは本や映画のシーンを思い出しながら見学しました。入り口を入って2階に上がると回転式の隠し扉があり、その扉を押すと3階の屋根裏部屋に通じるようになっており、そこがアンネたち家族4人が暮らしていた場所でした。
一家はその後、ゲシュタポに逮捕され強制収容所に送られ、アンネは15歳の生涯を終えました。アンネの家族の中で父オットー・フランクだけが生還し、後に強制収容所から同じように生還したエルフリーデと再婚します。エルフリーデの娘エヴァはアンネとは同年齢で、母エルフリーデと共にアウシュビッツで生き延び、母との収容所での壮絶な日々について記述しており、日本でも「エヴァの震える朝」(朝日文庫)というタイトルで出版されています。エヴァはこの収容所で父と兄を亡くしています。エヴァは母がオットー・フランクと再婚したことにより、アンネとは義理の姉の関係となり、アンネとはもともと顔なじみでもあり、生前はお互いに隠れ家を行き来していました。エヴァは2016年に86歳の時、71年ぶりに娘のシルビアと共にアウシュビッツ強制収容所を訪ねます。その旅にNHKの記者が同行し、ドキュメンタリーを制作しています。私もこの番組を見ましたが、この番組の中で「大切な人を失った心の傷は決して癒えることはないわ。誰にでも別れはあるけれど、大切な人がどんなふうにして亡くなったかもわからないなんて。これだけはどうしても乗り越えられないわ」とエヴァがつぶやきます。アンネやエヴァが収容されていたアウシュビッツ強制収容所では110万人がガス室や強制労働、人体実験によって虐殺されました。

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