09.09
WEB版 エンタメ情報|音楽劇『エノケン』
人を笑わせることに命をかけた喜劇俳優の物語
俳優 市村正親さん
昭和の日本をとびきりの笑いで照らし続けた喜劇王“エノケン”こと榎本健一。東京の小さな舞台に登場してから、わずか数年ののちに、座員150名、オーケストラ25名の日本一大きな劇団の座長となった彼の情熱は舞台にとどまらず、映画、テレビへも進出。全国区の人気者となった。
人生を喜劇に捧げたエノケンの物語を又吉直樹が戯曲に書き下ろし、市村正親が主演を務める新作舞台。市村が舞台にかける想いを語った。
Q.喜劇王と謳われたエノケン役にオファーされたときのお気持ちは?
僕は、ミュージカル、シェイクスピア、あとは現代劇を演ってきていて、喜劇はまだ演ったことがないんです。舞台では人をいっぱい笑わせてきたつもりですが…。榎本さんの本を読むと「一生懸命に生きていることこそ喜劇」と書いてあります。演じることで、喜劇とはなんぞや、ということを僕自身が学べたらいいなと思っています。
Q.エノケンにどのような印象をお持ちですか?
実際にお会いしたことはないのですが、終始芝居のことを考えていたようですね。僕が若い頃の演劇人、三木のり平さんや三國連太郎さん…。みんなずっと芝居の話をしていましたから。そういう流れで言うと、僕も四六時中芝居のことを考えていたいので、パッションは共通していると思います。
Q.どのように演じたいですか?
堺正章さん、木梨憲武さんもエノケンを演じていますが、舞台で演じられるのは初めてです。
他人の人生、しかも激しく生きた方の人生を、2〜3時間で表現するのが芝居。それが好きでこの仕事をしているので、エノケンではなく、榎本健一という人間を生きたいですね。榎本健一の凄まじさみたいなもの…笑いもあって悲しみもあって、辛い出来事もあった人ですから。それでも生きていく強さを、演出のシライさんと考えていけたらいいですね。
僕は、浅利慶太さんと蜷川幸雄さんに育てられてますから。強く生きてますから(笑)。僕はどこででも生きていきますよ(笑)
Q.お笑い芸人でもある又吉直樹さんの戯曲ですね。
彼の小説には、人間に毛細血管が流れているような細やかさを感じるんです。役者は細かければ細かいほど探求しようとします。「わかりたい」「いつかはわかるかもしれない」。そう思う気持ちが演技につながります。又吉さんが描くエノケンの血液の中に、僕はどのように入っていけるだろうか…。1+1=2 以上のものが生まれると思っています。
Q.音楽劇。市村さんの歌も楽しみです。
せっかく歌える俳優が出るんだから歌った方がいいんじゃないかということで、音楽劇です(笑)。エノケンのモノマネにはせず、彼の歌を僕の声で歌います。どの歌を歌うのか楽しみにしていてください。
Q.俳優生活53年を迎えましたね。
76歳になってまた新しい役に出会う。挑戦のしがいがあります。実際の山は登りたくないけど、こういう舞台の山はやっぱり登りたいですね。まだまだ登らなくちゃいけない山があります。今回の舞台は久々に大きな山です。
Q.最後に読者へのメッセージをお願いします。
いよいよ、昭和の喜劇王、榎本健一を演じる機会をいただきました。歌って踊って芝居をして、とても激しい人生を送った人です。
「終わったら席を立てなかった」となるくらいの舞台をお見せする覚悟でおります。ご期待ください!

text.田中奈都子
公演情報
音楽劇『エノケン』
<東京公演>
日時:2025/10/07(火)~2025/10/26(日)
会場:シアタークリエ
<大阪公演>
日時:2025/11/01(土)~2025/11/9(日)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
<佐賀公演>
日時:2025/11/15(土)~2025/11/16(日)
会場:鳥栖市民文化会館 大ホール
<愛知公演>
日時:2025年11月22日(土)~24日(月祝)
会場:名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)
<川越公演>
日時:2025年11月28日(金)~30日(日)
会場:ウェスタ川越 大ホール
■作 又吉直樹
■演出 シライケイタ
■出演
市村正親 松雪泰子 本田響矢 小松利昌 斉藤 淳 三上市朗 豊原功補












