れば、地球の重力を振り切れるか、ということです。これは割とかんたんに計算できます。地球の重力がつくる位置エネルギーを、その脱出したい物体の運動エネルギーが上回ればよいのです。地球の表面から脱出する場合には、地球の表面、すなわち地球の中心から地球の半径分のところの位置エネルギーを計算して、それを上回る運動エネルギーを持てばよいわけです。地球の半径をざっと六四〇〇キロメーターとすると、その脱出速度は、秒速一一キロメーターとなります。これ以上の速度を持てば、物体は地球から脱出できます。かなりの高速ですよね。だから打ち上げにはあの大がかりなロケットが必要となるのです。地球には大きさがあります。しかし、理論計算する上では、たとえば、地球の大きさを無視して、地球の中心にすべての質量が集まっている、と考えることもできまに残念なことに、同年、彼はその疾患によって亡くなりました。シュヴァルツシルトは亡くなってしまったものの、後世に驚くべきものを残しました。この解では、ある半径のところで、特異点を持つことになっていたのです。特異点とは、その法則や規則が成り立たない点のことですが、ここでは、各種の物理量が無限大に発散してしまう点です。これは数式上で議論しているうちは、単なる計算上のバグである気もしますが、これを現実の自然現象、物理学的な意味に捉えると、実に奇妙なことが起こるのです。突然ですが、ここで、「脱出速度」なるものについて考えてみましょう。これは文字通り、ある天体から重力を振り切って脱出するのに必要な速度です。たとえば地球を離れてほかの天体の観測に行く探査機などを打ち上げるときに、どれくらいの速度で打ち上げを活かして、砲弾の弾道計算を行っていたそうです。しかし、一九一五年に自己免疫疾患に罹り、前線の病院に入院しました。運命の一九一五年。この年は、アインシュタインが一般相対性理論を発表した年でした。入院して暇だったシュヴァルツシルトは、その論文を読み、アインシュタイン方程式を解いてみました。彼は、ある質量を持った物体が、電荷を持たず、回転もせず、そして宇宙定数もないとした場合に、周囲につくり出す重力場について、世界で初めて、厳密な解を導き出しました。一般相対性理論の発表からわずか一か月後のことだそうです。もし彼が戦場で戦っていたままだとしたら、これは解かれていなかったでしょう。もちろん、後には別の物理学者が解いていたことでしょうが。翌一九一六年明けてすぐに、シュヴァルツシルトはこれを発表しました。しかし実57
元のページ ../index.html#57