KOBECCO(月刊神戸っ子)2026年11月号
28/136

私の舞台は、一人のお客さんとして観に来てくれます。この作品も、とても楽しんでくれました。先日、京都・南座で新作歌舞伎『流白浪燦星 碧翠の麗城』にルパン役で主演していたので、「夫婦で空飛ぶ怪盗やな」と笑っていましたね。同じく舞台に立つ者として、互いに励まし合える関係です。―舞台への出演が続いていますが、表現する上で大切にしていることは?感性を豊かに育む日々を送ることです。人の言葉や気持ちに丁寧に向き合い、自然や何気ない日常の中にも心を動かされる。その感受性を大切にしたいと思っています。両親は和歌山の自然豊かな土地で育ち、私も自然を身近に感じる環境で育ててもらいました。母は、散歩の途中で草花の名前を尋ねると、何でも答えてくれる人。春には一緒に七草を摘み、夏には蛍を見に行き、父とは釣りにも出かけました。季節の移ろいを感じながら育った時間は、今も私の大切な土台です。自分の身体と心で感じたことが、表現の豊かさにつながるのだと思います。文化を支えるとは…―西宮市のご出身ですが、帰省した際に立ち寄るお好きな場所はありますか?神社を訪れるのが好きです。昔から通っている近所の神社も、その歴史やお祀りされている神様について学んでから訪れると、また違った景色が見えてきます。地元で親しんできた西宮神社、廣田神社、越木岩神社も、由緒を知ることで、いっそうありがたく感じるようになりました。廣田神社の長い歴史や、越木岩神社の「甑こしきいわ岩」にまつわるお話など、知れば知るほど、幼い頃からこうした場所に見守られてきたのだと感じ、自然と手を合わせたくなります。次に訪れてみたいのは、六甲比ひめだいぜん命大善神社です。瀬せおりつひめ織津姫とのゆかりにも関心があります。―“知る”楽しみ方ですね。文化は、受け継ぎ、次の世代へつないでいくものだと思います。今でこそ伝統芸能を身近に感じる立場になりましたが、以前は私も詳しくありませんでした。難しそうだと少し距離を置いていたのですが、実際に観てみると、歌舞伎も本当におもしろい。声を上げて笑える演目もあることに驚きました。たとえば『怪談 牡丹灯籠』では、怪談でありながら夫婦のやりとりに大笑いしましたし、『番町皿屋敷』は、よく知られた怪談をもとに、男女の愛と信頼を描いた作品です。周りの方には「難しく考えず、まずは観に行ってみて」とお声がけしています。こんなにもおもしろいのなら、私も子どもの頃からもっと観ておきたかったと思います。甥や姪にも、年齢に合った、楽しめる演目を選んで、よく観てもらっています。28

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る